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漫画原論 (ちくま学芸文庫)

価格: ¥969
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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漫画研究の必読書 ★★★★★
最高です!

いままでそれなりの数の漫画研究関係の本を読んできましたが、これに勝る物はちょっと思い浮かびません。漫画がどのように発展してきたかの歴史的背景を踏まえたうえで、コマ割、オノマトペ(擬声語)、台詞などなど、漫画の経済原則がどのようになっているのかさっと分析して見せるセンスには脱帽でした。また、巻末のスライドを使った講義を模した形式での漫画史の紹介が面白く、戦後から現代にいたるに、いかに漫画の中で「空き地」(ドラム缶と土管が置いてあるアレです)がなくなっていっているか?カタストロフの風景がもつ意味がどのように変化したか?また大きな物語の消失ともに『西遊記』はどのように直接的に語ることが不可能になり、どのようなパロディとして描かれたか?等々様々な角度から漫画を分析しつくします。

漫画研究を志すならこれを読まないということはあり得ないでしょう。
漫画“非”原論 ★★★★☆
自身の出版する評論に「漫画原論」、とつける。よく考えたらそれは、並々ならぬ自信がなければ到底不可能なことではないだろうか。他の芸術ジャンルならふつう、例えば「映画原論」(どどーんっ!)、「文学原論」(どどーんっ!)と、効果音がつくぐらいに大仰なものになってしまいかねない。映画にしろ文学にしろ、100年は優に超える歴史の積み重ねがありかつ、両者ともプロアマ、アカデミズムの内外を問わず、数え切れない評論家や目の肥えた受容者が存在するはず。それらの人々をさしおいて、原論と名のつく本を出すとなると、よほどの自信がなければつとまらないはず。
裏を返せばそれは、自分にその分野の根本、原論を述べる資格があり、地位があるという自負していることになりかねないが、これが漫画だとまた少し事情が違ってくるのだろう。おそらく、このタイトルは、筆者独特のユーモアだ。

なぜなら、筆者は「あとがき」において、彼の漫画観を端的に述べているのだ。「漫画にあっては、修辞的な逸脱そのものがあらかじめ体系の本質に横たわっている」。「逸脱」が「体系の本質に横たわっている」という漫画媒体において、どうして「原論」が語られようか。ここから察するに、この本のタイトルは漫画に原論なんて成り立たないよ!という筆者独特のメッセージといえるだろう。

本書は、それでも体系的な漫画批評を試みている。筆者自身が明るい映画との比較から、オノマトペ、文体、内面、コマの配分など、以前夏目房之助も同じような本(マンガはなぜ面白いのか―その表現と文法 (NHKライブラリー (66)))を出していた。漫画を読むだけなら手に取る必要はないが、漫画を批評するのであれば、それと本書のどちらかは読んでおくべきだろう、という内容になっている。
気合が入っている。 ★★★★☆
 記号論・映像論などをベースに持つ、人文科学系インテリの四方田氏の手によるマンガの表象システム論を体系的に論じた入魂の一冊。

 同系統の本に詳しい人に言わせて見れば内容的には、夏目房之介氏の著作と重なるところはかなり多いようですが、四方田さん的な人文科学系インテリ言語に慣れた人にとっては夏目さんのそれとたとえ指摘が同類のものであったとしても、考え方として、けっこう理解がしやすいかもな、という感じがしました。

 漫画の愛好家である四方田氏が本当に「本気で」体系的に論じることを試みている一冊なので、そういうのに多少なりとも興味がおありのかたは読んでおいて損のない一冊だと思います。

 ただ、難点をあげるとすれば、――これは長所でもあるのですが、発想が記号論とかの私があまり好きになれないような点までひきずっていることで、例えば「のっぺりとした鼻」が登場することと「時代がのっぺりすること」をなんの根拠もなく繋げて論じてしまうような感覚なんかっていうのは私には少し受け容れがたい種類の論じ方でした。