インド料理の奥深さがよくわかる
★★★★★
読み終わってから、本書が青少年向けの「ジュニア新書」シリーズだということに気がついた。
正直、普通の岩波新書だと言われても気づかなかったかもしれない。
そんな、大人も十二分に楽しめる良書です。
著者は、インド滞在暦も長いインド専門家。
しかも、家庭でもスパイスを配合してカレーを作ったりするという。
それだけに、本書の記述は臨場感にあふれ、かつ豊富な歴史・文化知識に裏打ちされたしっかりしたものになっている。
カレーについて語るのに、これほど適任な人もいないだろう。
それにしても、インド料理の奥深さはすごい。
ものすごい量のスパイスの複雑な組み合わせ。
地域によってまったく違う、多彩な食文化。
下手をすると「ただ辛いだけ」と思われがちなインド料理を見る目が、明らかに違ってくる。
そして、料理の話から発展する著者のインド文化論も、非常に鋭く、読み応えがある。
豊富な写真も楽しく、一気に読んでしまった。
おすすめです。
料理人の数だけインド料理がある
★★★☆☆
私は海外にいくとほとんどインド料理店と広東料理が夕食の定番です。インド料理は、初日はrogan josh, 2日目はvindaloo,3日目はbyriani(??)、4日目は、キーマといった具合です。というわけで、普通だったらこの種の本はパスしてしまうのですが(読むよりは食べた方がいい!)、どういうわけか著者の経歴を見て懐かしくなって読んでしまいました。著者はインド史の専門の学者でインドには前後通算して8年も滞在した人物です。それも最初の滞在は1961年というはるか彼方の伝説の時代です。中にはウーティのYWCAでのanglo indianのおばさんとの交流まででてくるほどです。最初の学食や寮でのインド料理の経験から話はスタートしますが、著者が強調するのは家庭料理の多様性とすばらしさです。話はどうしても南インド、マドラス、ケララ、マイソールやスリランカが中心となりラジャスターンなどは取り上げられませんが、できるだけ様々な地方のインド料理を紹介しようとしています。南のスパイスと北の乳製品の混合をインド料理の本質と捉えそこに多様性の中の統一を見出すのはさすが学者のインド料理本です。我が家でも南インド出身のコックと別なコックが作る料理はそれなりの差がありましたね。ところどころ触れられるインド史の解釈の部分は若干ご愛嬌ですが、どうしてこれが岩波ジュニア新書なのでしょう。