本書は「学術的な研究に裏付けされたエッセイ」(347頁の訳者あとがき)
であり、息子とではなく"母娘の関係"の説明付け(実例を映画や文芸に
なぞらえている)。著者の1人は芸術を社会学的見地から論ずるのが専門である。また、訳者夏目幸子氏ご自身が気鋭の大学教員であり、かつ妙齢の女性研究者である。先般クロワッサン(女性誌)の巻頭を飾ったが、赤いルージュ
の印象的な女性であった。
作品の索引(映画/その他の文学作品の2本立)が巻末にあり、本書を
研究材料としての論文執筆も可能であろう。
タイトルは平易であるが、内容は根性なしでは読了しかねる。2600円
プラス税という価格も主婦がちょいと購入するにはさまたげとなる。
でも、元文学少女にはよろしいか。原作の格調高さをくずさずに翻訳
されている(はず)なのはさすが。読者に迎合しようとしない
本出版はすばらしいと思う。
また、翻訳と感じさせない文章の読みやすさ、随所での映画や小説の引用による分かりやすさも、本書の大きな魅力です。訳者の言葉通り、読後感はすっきり。思わず引用されたフランス映画を見たくなりました。