生物多様性は経済課題
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著者の足立さんは、元々は熱帯林の研究をされていて生物多様性にとても詳しく、現在はその知見を活かして企業向けの生物多様性に関するコンサルティングをされています。また、生物多様性だけでなく、CSR調達、CSR経営についてもコンサルティングをされています。
生物多様性と言うと、「生物を守る」という自然保護的な発想が最初に浮かぶのではないかと思います。この場合、企業の取り組みは、寄付や従業員のボランティア活動による自然保護、という社会貢献の取り組みが中心で、企業経営の中心からは外れた活動になっていました。
しかしながら、足立さんは「生物多様性は経営課題である」として、これからの企業経営は生物多様性とは切っても切れない関係になりつつあることを、事例を紹介しつつ、分かりやすく解説されています。例えば、石油は「枯渇する」「気候変動の原因となる」という問題があります。それに対して、木材などの生物資源は、適切に管理すれば持続的に利用可能であり、元々空気中の二酸化炭素を使って体を形成しているので燃やしても空気中の二酸化炭素が増えない、という利点があることを紹介されています。
また、生物資源を調達する際に生物多様性に配慮していないと、不買運動などの経営上のリスクが既に発生していることも、チョコレートやタングステンなどに関して説明されています。このあたりのサプライチェーンでの生物多様性に関するリスクの解説は、さすがCSR調達のコンサルティングをされているだけあって、説得力があります。
「生物多様性は経営課題」であり、今後の「チャンス」でもありますから、大きな企業だけでなく、中小企業の経営者の方にも、ぜひ読んでいただきたいと思います。日本は生物多様性が豊かな場所「ホットスポット」であり、これからはその生物資源を活かすことが大事であるという足立さんの提言は、まさにその通りだと思います。