まずChapter1では、数学が登場した歴史的背景について述べられる。古代イスラエルの宗教と論理学の関係、古代ギリシャの3大難問、大航海時代の新航路発見の意義などを読み進めていくうちに、数学の意義や考え方について学ぶことができる。Chapter2では、東西の論理の違いについて、興味深い話が紹介されている。「なぜ、日韓関係はよくならないのか」の部分を読めば、国際理解に関しても論理が重要な意味を持つことがわかる。
Chapter3は、数学の論理によって育まれた資本主義の考え方が述べられる。資本主義の考え方に、いかに数学が根づいているかを実感できる部分だ。Chapter4は、本書の肝というべき部分で、背理法、帰納法、必要十分条件、対偶などの証明の技術について述べられている。統計調査の注意点や困ったときの発想法なども述べられている。
最後のChapter5では、まとめとしてマクロ経済学の理論が登場する。ケインズと古典派の経済理論、リカードの大発見などを数学的視点からわかりやすく説明しており、マクロ経済の教科書が理解できなかった人にも理解しやすい。
300ページ以上におよぶ本であるが、著者の軽快な語り口と興味深いトピックのおかげで、さらりと読むことができる。数学嫌いを直し、論理的思考を身につけるために、ぜひ読んでおきたい1冊だ。(土井英司)