引用や語彙も気が利いている
★★★★★
プロダクトデザイン会社IDEOのゼネラル・マネジャーが執筆した、イノベーションを起こすために必要な人材の特徴を10列挙して具体的に解説した本である。イノベーションとは言え、製品・サービスのデザイン面やマーケティング面での成功のコツ・ツボであり、技術開発・技術革新の類の本ではない。
しかしながら、述べられていることやその事例には非常に興味深いことがたくさんある。「人類学者」としての特性は、なんども見たことがあるのに・初めて見たような視点で見れることであったり、「ハードル選手」としての特性は、どんなに悪い状況でも一筋の明るい希望を見つけることであったり、「経験デザイナー」としての特性は、何が真実かを嗅ぎつける勘をもっていることであったり、「語り部」としての特性は、要するにと思いつつ話を聞かないことだ。
また、引用や語彙も気が利いている。
・「私は失敗したことがない。一万通りのうまくいかない方法を発見しただけだ」
by トーマス・エジソン
・「私はいつでも学ぶ用意があるが、かならずしも教えられることが好きなわけではない」
by ウィンストン・チャーチル
・「ビジネス・リーダーは、事実と真実の違いに意識的であるべきだ。企業はあまりにも
事実ぎりぎりのところで語りすぎ、本来はもっと中心部の真実を貫徹すべき」
・「私たちの多くは、他人の物語を理解するとき、近道をしようとする悪い癖がある。」
自分がもっとクリエイティブな部門にいたら、もっともっと感動したと思う。でも、非常に良い本には違いない。
前作より具体的ですぐ意識が変わる
★★★★★
前作はどちらかと言えばイノベーションを生み出す「環境」の話が多かったのに対し、今作は実際にその環境の中で自分はどう考え、どう振舞えばいいのかの指針を具体的に提示してくれている。
本では内容を10人の「人材」に例えて説明しているが、これは考え方とかアプローチ方法の種類とも言えるので、今の自分の中にでもすぐ取り込める内容になっている。しかも記述が例に富み、非常にイメージしやすい書かれ方なのでサラサラと読み進めることができた。
そして蛇足だが、例示で出てくるIDEOで働く人のバックグラウンドの多様さと深さ(T型人間)には毎度驚かされる。こんなに優秀で好奇心の強い人材が集まってればそりゃ強いだろうと。同時に、人生難しいこと考えずに何をやってもいいんだな、と背中を押される気分にもなった。梅田望夫氏が言っていた「好きを貫き」、けものみちを切り開いていくことで結果的に特別なキャリアができていた、という生き方にも通じるのかも。
最後の章でも、イノベーションを実現しようとする姿勢は一つの生き方だと言っている。個人的なバイブル『ハイコンセプト』もそうだが、こういう「新しいタイプの価値ある人材」が早く一般社会でも評価、処遇されるといいのになと思う。
視点は面白そうですが・・・
★★★☆☆
本書は、イノベーションをするためには10の役割が必要である、と力強く説いている。視点はかなり面白い。しかしながら、かなりこじつけっぽく感じる。
10人もいないのに成功している会社は日本にもたくさんあるので、発想する過程の中で、この10段階を構築していくと、イノベーションするための幅が広がっていく、とした方がよかったのではなかろうか?
内容は悪くはないが・・・
イノベーションを起こす役柄
★★★★★
イノベーションを継続的におこす仕組みとして、必要な役割を10のキャラクターに分類し、豊富な具体例や写真を使って説明してくれる書です。
常に10のキャラクター全てが必要なわけではなく、一人で複数のキャラクターを演じても問題ありません。
人は、役割を与えられたり、肩書きを明確化されたりすることで、思った以上に、その役割を果たすための振る舞いをすることが知られています。
本書のように、イノベーションのための役割を明確化し、それを意識して演じることや、演じる人を育てることは、非常に効果的だと思います。
目新しい内容ばかりというわけではありませんが、最初に出てくる『人類学者』という項は必読の内容です。
常に新鮮な眼で人間の行動を観察し、製品やサービスとの相互作用を深く理解するという役割こそが、この会社の力の源泉なのではないでしょうか。
イノベーションの人材論
★★★★★
イノベーションを人材論の視点から斬った名著。和訳では「10の人材」と訳されていますが、原著では「10の仮面:ペルソナ」となっているとおり、ひとりでイノベーターとして行動するためのチェックリストとして使うことだってできます。10の人材あるいは役割について、具体的にどんなワザがあるのかを含めて、IDEOの経験蓄積に基づいた実践的な本に仕上がっています。IDEOは私の尊敬するイノベーション企業のひとつで、前著同様本当に楽しみながら読みました。イノベーターでありたい人、手元において置くべき本だと思います。