名著ではあるが・・・
★★★☆☆
間違いなく名著です。現在の日本の農業政策にかかわる問題点を見抜き、言い切っています。
お米の減反が及ぼす悪影響に始まり、現在の農業政策のあるべき姿を「日本の食糧を守る」という誰もが納得する観点から述べています。
多少なりとも農業の世界が分かる方にとっては納得すべき点が数多くあります。
しかしながら非常に読みにくい書です。難しい問題について述べているのでやむを得ないのかも知れませんが、多くの計算式やグラフを用いて数学的な説明が数多くなされており、さらっと読むことはでない書です。たとえ関係者でも、相当時間をかけなければなかなか理解し辛いと思います。
もう少し簡単に現在の農業政策等を学びたいのであれば、ベストセラーとなった「日本は世界5位の農業大国」をお勧めします。
また、題名に「経済学」とあるものの、一般の経済学を農業を通して解説するという書ではありません。従って、経済学を幅広く勉強しようとしての購入はしない方が良いと思います。あくまでも、農業政策の内容が中心です。
主張は素晴らしいのですが、読みにくいことを減点とし、★3つとします。
衰退しつつある日本の農業の、将来に向けて必要な提案がとてもたくさん込められている。
★★★★★
力作である。
衰退しつつある日本の農業の、将来に向けて必要な提案がとてもたくさん込められている。
著者は、政策決定に携わってきただけあって、今のこの国の農業をめぐる問題点を、深くとらえている。
著者の主張は明確である。
農業政策で今のこの国にあるのは、農家の保護であって、消費者の目線はどこにもない。
今必要なのは、減反の廃止、関税の削減とEUのような大規模主業農家に限定した直接支払い政策である。
興味深い分析がいくつもある。
日本の米価と中国の米価が近づいてきているという。このまま行けば、十分輸出で採算が取れる可能性もあるという。
減反をやめれば、国内需要も拡大するし、ミニマムアクセスも不要となる。備蓄米の政府負担も削減できるという。
さらに、今話題の口蹄疫も輸入麦わらが感染源として疑われており、減反をやめて大規模化を進めれば必然と麦わらの収集が進み口蹄疫の予防にもつながるともいう。
化学肥料や除草剤など環境に負荷のかかる作業をしているのも、兼業農家であるともいう。
それにしても、農協という組織は、農家のためでもなくましてや消費者のためでもない自己防衛と集票のための組織となってしまったのかと愕然とさせられる。