確かにそうだった。ねじ回しは、人類の道具箱の仲間としては比較的新しいものであることをリプチンスキは発見した。それは中世ヨーロッパ時代の発明で、中国の影響を受けていない発明品なのだ。もちろん、他の多くのこと同様、レオナルド・ダ・ヴィンチはごく早い時期にねじ回しのアイデアを思いついており、交換可能なギア付きのいろいろな種類のねじ切り機を設計している。それでもなお、ねじ(および、ねじ回しと旋盤)が一般的に使われるようになるまでには何世代もかかり、マイナスドライバーやソケットなどのねじが登場したのは最近になってからだ。
ねじの発展を1冊の本にまとめ上げたリプチンスキの探求は、とてもおもしろく、読者が日用品の起源に興味を抱くようになるのは確実だ。(Gregory McNamee, Amazon.com)
ただし、他のレビューアの方々の意見と同じく、本としての完成度は少し余地がある気がしました。最終的な編集のすんでいない生(なま)な部分が残っているようです。
確かに読みやすい本であり、
「この千年で最高の発明は何か?」という問題提起の奇抜さにも興味が沸く。
著者は自分の工具箱から一つ一つ道具を取り出しながら考えていき、
そこで本書のテーマである「ねじとねじ回し」にたどりつく。
惜しいことは、そのテーマの興味深さに反して
①図版の使い方が不十分なため、その部分でなにをいいたいのか
文章を読んだだけではわかりにくい箇所があること。
②ねじとねじ回しの歴史は詳細に書かれているが、
それらの何がどのようにすごいのかという説明が不十分であること。
これらの点で物足りなさを感じた。
個人的に一番興味深く読めたのは第七章「ねじの父」の部分である。
そこでは天文観測に使われたアンティキシラの古代コンピュータや
アルキメデスの水蒸気砲など長い間見落とされていた
古代ギリシャ人の技術レベルの高さ、発明の実用性・独創性の高さなど
についてかかれている。
わたしたちはつい単純化して
実用技術文化のローマ人、思弁哲学文化のギリシャ人というような
かたちを考えてしまいがちだが、
どうもそうではないということに気付かされたことが本書に収穫であった。
ねじとねじ回し、この仕組みは力学的に何かすごいものらしい。ねじとねじ回しが、いつ頃、どんな風に使われ始めたのかという歴史も興味深い。でも、肝心のねじのすごさの核心が説明されていない。日曜大工に詳しい著者は、自分では納得しているようだが、素人読者には伝わってこない。もっと詳しく説明してくれたら、おもしろそうな気がするのに。