大作を多数収録
★★★★★
この「天の巻」は、ページ数を多く使った壮大なスケールの作品がたくさん入ってるのが特徴です。このシリーズはどれも素晴らしいですが、内容はトップクラスに充実してると思う。仮説の面白さ、考証・考察などの深さにも脱帽。「天孫降臨」「黄泉からの声」はかつて単行本表題作にもなった大作。花咲〜川上の上の三本も、それぞれ繋がった連作ともいえるものです。「天神さま」は自選作品集「彼方より」にも選出されました。自分が一番好きなのは「天孫降臨」です。これは謎の宗教団体や富士樹海巨大洞窟などが登場する、シリーズ屈指のスケールとエンターテイメント性の高さを誇る作品で、ラストのクライマックスの盛り上がりも凄いです。
花咲爺論序説
幻の木
川上より来たりて
天孫降臨
一、大樹伝説
二、樹海にて
三、若日子復活
黄泉からの声
一、井戸のまわりで
二、黄泉からの声
天神さま
暗黒の神話
★★★★★
自分の一番のお気に入りは「天神さま」です
女の子がクルッと振り向いた瞬間、
「蝿声す邪ぶる神」
が出現します
その驚愕のお姿は必見です!
諸星大二郎先生はまさに天才と言えるでしょう!
これこそが怪異、そしてこれこそが諸星大二郎の世界。
★★★★★
すべての常識をうち捨てよ、心霊現象・古代の神々を信じる異端の考古学者こと卑田礼二郎が大活躍をする1970年代の諸星大二郎先生の代表作が文庫本で嬉しい登場です、花咲かじいさんの咲かす花が飛行機墜落事故で死亡をした兄妹を蘇らす、木を探す瓜子姫とそれを妨害をするアマノジャクの驚愕のお話、飛行機墜落事故で蘇り神霊の力を宿した兄妹が再び登場、2人に危機が迫る、皿屋敷の怪談、井戸の底より現れるキクリヒメの驚愕の真相、天神様の通りゃんせの遊び歌の驚愕の真相など実に興味深いお話ばかり、お勧めです。
これぞ連作短編集 !
★★★★★
「地の巻」に続く「妖怪ハンター」シリーズ第2段。「地の巻」の収録作品が、掲載誌の都合上1話完結の独立した話になっているのに比べ、本作は各作品が有機的に繋がっており、"これぞ連作短編集"という醍醐味を与えてくれる。各作品の狂言回しを努めるのは前作と同じく、民俗学研究家、稗田礼二郎(勿論「古事記」の口伝者と言われる稗田阿礼から名前を取っている)。
冒頭の「花咲爺論序説」で登場する"復活力を持つ木"が、続く「幻の木」、「川上より来たりて」の"大木にまつわる謎"に繋がり、それが本作品集のメインとも言える「天孫降臨」で"大樹伝説"として"花開く"。見事な構成である。
「黄泉からの声」では番町皿屋敷で有名な皿屋敷を、古事記の菊理媛と平将門の首塚に結びつける発想がユニーク。「天神さま」では"わらべ歌(通りゃんせ)"が持つ不思議な歌詞を「日本書紀」の邪ぶる神に結びつける。言われて見れば私自身「かごめ、かごめ」の歌詞に疑問を持っていて、特に「うしろの正面だぁ〜れ」という節に不気味な印象を抱いていた。"わらべ歌"と神話を結び付ける着眼点が秀逸。
全般的に作者が「古事記」、「日本書紀」を良く研究していることは明らかで、作品の狂言回しに"稗田礼二郎"を配しているのは大変マッチしている。作者の短編集としては一番の出来と言える秀作。
ついにまとまって読める稗田礼二郎サーガ
★★★★★
80年代から90年代初頭に描かれ、妖怪ハンターシリーズの中でも大きな塊をなす作品群がきれいにまとまって収録されています。
前巻「地の巻」がラブクラフト風味のホラーだとすると、続く「天の巻」は世界の原初の時に失われたモノを求める勇壮な物語、かもしれません。稗田はオデュッセウスからインディ・ジョーンズへとつらなる冒険者の系譜を継ぐ者、なのかな。
世界樹(ユグドラシル)をめぐる冒険譚…「花咲爺論序説」「幻の木」「川上より来たりて」「天孫降臨…第一章大樹伝説、第二章樹海にて、第三章若日子復活」。皿屋敷伝説が意外な大物へとつながる「黄泉からの声…第一章井戸のまわりで、第二章黄泉からの声」。映画「奇談」に一部引用された好編「天神さま」。いずれも充実しています。
とくに「花咲爺」から「天孫降臨」へとつながるエピソード群は読み応えたっぷりです。集英社文庫『暗黒神話』所収の「徐福伝説」と併せてお読みください。