「まちづくり」のために何が出来るか
★★★★☆
出石稔教授(関東学院大学)の監修による、政策法務入門シリーズの第4巻です。
自治体が現場で直面する困難に「政策法務」で対処するエピソード仕立ての構成は従来のとおり。今回は「みさき市」という架空の自治体を舞台に「まちづくり課」の活躍が描かれます。
「まちづくり」の語は、ソフト・ハードの両面に使用されますが、ここでは、都市計画・開発・建築・景観など、ハードとしての都市基盤に関与するものとして使用されています。
執筆は、先進的な土地利用条例の制定と運用で知られる、横須賀市職員の方々。その意味で、本書は、同市の実践的な試みがわかりやすく記載されている点に特徴があります。舞台となる「みさき市」も、都市近郊に位置するとともに、港湾に接し、斜面が多い地勢など、横須賀市を思わせる設定になっています。
逆に言えば、窓口での苦情が事件解決の端緒となるような、既刊の3冊に見られるエピソードは本書では控えめです。
これは、住民の利害関係を調整の上で都市基盤が整備されるためには、例えば都市計画などグランドデザインに大きく依らなければいけないことと、規律密度の強い開発・建築関係の法令を読み解くに当たって、その説明にページが割かれざるを得ない構成上の理由があるからでしょう。
とはいえ、本書では、収録のエピソードを通して、職務経験のためのインターンを経て採用された新規採用職員と、その教育を任された若手職員が活躍します。真摯に問題に対処していくその様子は、複雑な法構成や技術基準の良い絵解きになるばかりでなく、職員の成長物語としても楽しく読めます(^^