最近「妖狐×僕ＳＳ」シリーズを読了したのですが、その作者さんが描かれた短編集
ということで興味を惹かれました。
収録作品は、いずれもいぬぼくより以前のものらしいですね。
短編集ということもあり、様々な風合のあるお話が楽しめました。

「お嬢様と妖怪執事」(表紙イラストの二人ですね)は、主役二人の
エッセンスをいぬぼくに取り入れられたらしいので、ダブルで読んでいると
一層楽しめる気がします。
素朴な温かみとコメディのある内容で、お嬢様のツッコミの数々が素晴らしく的確です(笑)
とりあえずモーニングスターは毬ではないと思います。

そして「山田」。
アールヌーヴォー調のイラスト採用からして突き抜けていますね！
でも私としては、ある意味「私は」より胸に響いてきました。
「これは山田の魅力にひれ伏したことになるのか」と若干自分に疑問を抱いてしまいますが(笑)
山田と有沢先生についついお幸せに！と言いたくなってしまうという。
何事もあきらめないで頑張る山田と、自分の頑張りが認められていることに気付かない有沢先生の
コントラストが魅力的でした。

「私は」はちょっと触れるのをためらうような、繊細な心の動きが見えました。
「誰とも共有できないモノをもった空しい自分」と「誰にも分かち難いほどのモノに出会えた自分」。
ここまでセンチメンタルではなくとも、誰でも一度は感じたことがあるような気がするお話でした。

★体は弱いけど気丈なお嬢様と座敷童の青年のお話、「お嬢様と妖怪執事」。
☆変態ナルシストの山田君となぜか彼に狙われる可哀想な有沢先生(男)のお話、「山田」。
★旅する人形使いの青年(…と、歪んだ愛を彼にぶつけまくる人形ヒロイン)のお話、「ストレイドール」。
☆高校卒業を間近に控えた少女とカメラ屋のおじさんのお話、「私は」。
現代×ファンタジー、現代だけど、ある意味突き抜けた異世界(笑)、ファンタジー、現代シリアス…
見事にバラバラのお話が四作収録されています。
どの話もジャンルは違えど根底に「いい話だなと」思わせるものがあるのですが、「山田」だけは最後まで突き抜けていました(笑)
個人的に好きなのは「お嬢様と妖怪執事」と「私は」です。
「私は」は卒業や進路、将来の夢といった岐路で悩んだことがある方はどこかで共感出来るお話じゃないかなと思いました。
おじさんとの独特の距離感と関係があったからこそ、主人公は最後の言葉に辿り着いたんだなと思わせる内容でした。

優しくて、可愛くて、格好良くて、笑えて、泣ける。

オビに書いてある通りの短編集でした。オススメです★