全体は、論理思考がもたらす仕事の効果や、論理思考を支える手法などを論じた理論編と、ビジネスパーソンが演習課題を実際に解き、それを著者が講評する実践編の2部で構成されている。理論編では、「帰納法」「演繹法」「MECE(モレなくダブリなく)」「ピラミッドストラクチャ」の4つの「思考のツール」と、それを使いこなすための「So What?(それって何?)」「True?(ホント?)」などが紹介されている。従来の論理学の概念にコンサルタントの手法を組み合わせている点がユニークで、またツールばかりを強調せず、普段使う疑問詞の役割を重視しているところには好感がもてる。
実践編の課題は、「確実に言えることを判断する」「会話をしながらイシューを押さえる」などの5テーマ計18問。選択肢問題と論述形式の組み合わせで、1つの課題がじっくりと解き明かされている。会議や会話でテーマや前提の把握が大切なのは言うまでもないが、それを「イシュー」という巧みな表現で照らし出すなど、新しい視点を与えてくれるのが注目である。
受講生たちの解答は多種多彩で、そこから自分の論理の偏りや欠点を見つけることができるのは、講評形式の効果であろう。欲を言えば、練習問題をもっとたくさん載せてほしかった。(棚上 勉)