全ての要素が高い次元で噛み合った見事な出来
★★★★★
相応の残酷さを見せながら、自由奔放に動き回るキャラ達と二転三転するドキドキな展開の中に人と人とが繋がる心の大切さを挿み込んでほんのり暖かな気持ちにさせる結末まで、全くもって非の打ち所が無い、本シリーズ随一の素晴らしさだと思った第8巻である。
本巻で実にいい味を出していたのが再登場のン・イゾイー。今回はちょっと変わった関係を築くことになるが、ナイスなサンタ服の口絵はともかく出番は少しかと思いきや、実は全編で活躍する本巻のヒロインだったりする。属する組織は別にしてこの娘自体はとても面白くて良い娘。今後ファンが増えそうな気配である。そして相変わらずの相互理解不能振りを見せる竜島/竜頭師団(ドラコニアンズ)の強敵には暗澹とした気持ちにさせられるが、これもまたフィア達の過去との訣別には避けられないしがらみ、乗り越えるための試練として対峙させ、フィア達の“人間”としての成長を感じさせる巧みな構図である。さらには、ここに関わってくる銃音&漸音姉妹(イイ感じの失敗ばかりなダメっぷり)、果てはあの理事長の秘密までもが裏の裏をかく驚き展開の末に明かされ、同時に孤高の戦士ン・イゾイーに欠けていた大切な“未知”の思考まで自覚させる盛り沢山な内容である。
それにしても夜知家居候達の闊達で騒がしいやり取りが素晴らしい。各キャラが完全に独り歩きしており、作者は彼女達のやり取りを筆記するのに大変……そう思わせるくらいスムーズな言動が勝手に自然に溢れてくるのではなかろうか。夜知家に初お泊まりするいんちょーさんがこれに拍車をかけてとぼけたことやいじらしくも変態的なことをしでかして花を添えている。
巻末の『ラフイラスト集』には第6巻で見られなかった潰道先生の、あの伝説(?)の「ヒモ水着」が披露されているが、これがまたすんごい。実に凄過ぎることを付記しておかねばならない。