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空白の叫び〈下〉 (文春文庫)

価格: ¥750
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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そうきたか! ★★★★☆
正直、一番興味があったのは銀行強盗の場面。
拳銃や刃物を突きつけて、「金を出せ!」は、ないだろうと思っていたが。
よく考えた方法だと感心。

さて、人を殺したことで出会った3人は、世の中をあっと言わせる為に、銀行強盗を企てる。
貫井さん特有、思い込んだら一直線!(柏木×久藤なんて、まさしくそれ)

神原君が受け取った手紙には、葛城君ちのお父さんが息子に語った内容が書かれていたのだろう。
このオチは、かなり驚いたが、久藤君のはヒネリがないねぇ。

殺人を犯した3人を恨む気持ちは分かるが、恨んだ人たちの行動は、犯罪である。

少年犯罪に関わらず、殺人という行為は、死んだ人は2度死ぬし、遺族も死ぬ。
少年院は、果たして「更正」でいいのか?
罪を償う所ではないこと、犯罪を犯した子供たちの経歴に一切傷か付かないこと。
本当にそれでいいのだろうか?

少年法の改正に反対の人たちは、被害者になった時、初めておかしいと気付くんだろう。
案外、法を犯した少年たちも少年法に守られていることを知っている人が多いようで、
確かに若かりし頃(未成年)の過ちは、全うに生きる為のチャンスを与えるのはいいかもしれない。
けど…、と終わりのない気持ちが次々と沸いてくる。

東野圭吾の「さまよう刃」同様、やるせない気持ちになる。
愚かな大人と、幼すぎる子どもたち ★★★★★
 これでもかと悲惨な話を展開させながら、最後まで読者を引っ張っていく力は、さすがだ。もう年齢的に入ることのできない(笑)少年院の内情など、なかなか興味深いし、一度罪を犯した者への社会の厳しさも、十分に描けていると思う。
 私自身がそうだったから思うのだが、偏りのある愚かな大人のもとで育った子どもは、大人びて見えて、実は例外なく年齢より幼い。主人公の3人、あるいは被害者もそういう育てられ方の犠牲者であり、そのあたりを知り尽くして書かれた本だ。いつもながら人間観察力の鋭さには脱帽する。
 読後感が悪いと定評のある著者だが、無意識であっても自分自身の偏りを自覚していればこその後味の悪さなのだから、それで正解なのではないか。
少年犯罪を考える ★★★★★
久藤、神原、葛城。
この三人を主人公に物語が展開されるが、その他多くの人物が出現し、
それらすべての人たちが、強く関わっている。
ストーリーを読み進めれば、これらの関係が分かるが精読しなければ、
相関関係を見失いそうである。
しかし、関係を無視することはできないので、思わず確認するために読み返してしまう。
それだけ本書は、読書を惹きつけている、と考えられる。
また、「物語の順序」がよく考えられていることも、前述したようになる理由であろう。

「生き続けること」が、罪を償うことになるという点はなるほどと感じた。
人を殺すことが、どれだけ重いことなのか知ってもらうことは悪くない。
そういったことを葛城自身が、何らかの方法で本当に伝えることができるのであれば、
「罪を償う」ことが、できたと言えるかもしれない。
「罪を償う」ことの一部だと言えるかもしれない。

葛城、神原は幼少の頃から心の傷を負っていたと言えよう。
やはり、生育環境が彼らが罪を犯した根っ子の原因だと考えられる。
また、本書を通して、少年が非行に走るには、私たちが理解できないくらい、
深い深い根底があると感じた。

黒沢が、更生できそうな場面があったが、結局銀行強盗に荷担した。
更生しようと思っても、うまくいかない状況に直面するという現実も理解できた。
黒沢のような方法で社会からはじき出され、再犯するというケースも十分考えられ、
立ち直ろうと本気で思っていても、できないこともあると感じた。

昨今では少年法も改正され、多くの注目を浴びた。
いまや、少年犯罪は多くの人から目を向けられることである。
少年犯罪を考えるために読み、一つの観点として読むことも可能だろう。
特殊例としての物語完結 ★★★☆☆
 銀行強盗へ向かう閉塞感は、面白く呼んだ。
 ただ、上巻に比して、下巻はやや不気味なリアリティーに欠ける。久藤と葛城という、特異な性格が足かせとなったように思う。カテゴライズ不能な、今までの類型のどれにもにあてはまらないという稀有なキャラクターを持続させるのは、あまりにも難しかった。
 葛木や久藤が他者と関わりを持てば、必ず何らかの行動類型にあてはまっていってしまう。だから途中でそれを否定する。キャラクターが少々いき詰まってしまった。で、突然銀行強盗というところへいってしまう。久藤の八方ふさがりと破滅願望とが、微妙にズレを生じていて、しっくりこなかった。
 瀬田も、もっと不気味なキャラクターにもなったろうに、全てのカードを早々に見せてしまい、薄っぺらになってしまった。世間の悪意という、得体の知れないものを描いても良かったのに。姿なき悪意は、ネットの世界ではそれこそ日常茶飯事だ。
 柏木の父の長広舌による謎解きも、やや苦し紛れか。物語の展開では説明し切れなかったのか。…苦言を呈しすぎたが、これだけの長編を、飽きさせずに読ませる筆力はさすが。
生きる事が贖罪 ★★★★☆
三人にとって、殺人は衝動的に生じたものではなく、
「必然」だったのかも知れない。
殺人は絶対に許される事ではないが、一度目の犯罪である殺人は、
定められた道だったという風に描かれている様に感じる。

当然、少年院を退院した少年達に対する、世間の風圧は強い。
しかし、三人は少年院でいったい何を学習してきたのか?
全く反省の色が無いのが、特に問題だと思う。

罪を深く受け止めて、真っ当に生きる事が贖罪につながると思う。
あろう事か、三人は新たな犯罪へと突き進んでゆく。
それは、ほとんど捨て鉢とも見なされる。

金への執着が強い程、贖罪の道は遠のくという印象だ。
罪は犯していないが、彩の夢は、ハワイに別荘を持つ様な金持ちになりたい、
という下りがあるが、これは、いくつかの点を象徴している。

金は、艱難辛苦を伴う努力の結果として、後から少しだけ付いてくる。
金持ちになる事が夢なんて、目的と手段が逆転した、おかしな夢だ。

三人の金に対する執着の程度が、贖罪に対する意志を語っている。
死ぬ事は卑怯と言われ、生きて贖罪する事を要求される下りは、特に印象的だ。

物語は綿密に練られていて、大変興味深いが、
三人の人格面での特殊性が強過ぎるという印象は持った。
その点で、少年犯罪の本質に迫る社会派作品というよりも、
全体に、三人を題材にした意外性のある物語という印象だった。