罪と罰と贖罪と
★★★☆☆
文庫版で上・中・下、一気に読みました。これはもう、一気読み必至、です!
貫井さんは「どぎつい」描写や暗い題材を扱っても、読後感がふしぎと清廉、なので女性でも不快感なく読めるのではないでしょうか?
どちらかというと文学寄りに楽しめる、深みのある小説ですね。しかしミステリ風味もちゃんとあり、エンターテイメント性もあり、さらに一人だけずっと一人称で語られている神原の言動が、この中巻あたりから心理系ホラー化しているのも、(恐いんですが、)非常に面白かったです。貫井さんの書く、心理系・本格ホラー小説、読んでみたくなりました。
結末は、ここではネタばれになるし、この作品の感想は、作中の3人の少年が、同じ殺人という罪を背負いながらも、少年院を出たあとはそれぞれが違った「その後」を歩み出したように、結末に関する感想は、読者それぞれ、千差万別では? ――と思うので控えます。
気になったのは、この中巻に「ちゃんと刑務所で罪を償っていれば」「あるいは被害者に会って謝罪することができれば」「きっとなにかが許される」――そうとれなくもない、さりげない文章があること。なんだか、貫井さんらしくない、安易な言葉ではないか? と感じました。
贖罪については、下巻でそれぞれの少年が考察する場面があり、一応の結末を迎えるわけですが、そもそも題材が少年法であるだけに、内容が「罪と罰」に傾いてしまうのは、しょうがないかな、とも思います。ですが心理描写には定評のある貫井さんの作品、だからこそ、もっと「贖罪」にこそ重きをおいて、あれこれ語ってもらいたかったなーと、それで☆を減らしています。
不思議な出会い
★★★★☆
【上】で、殺人犯になった3人。
これまでまったく接点のなかった3人が、少年院で出会う。
ただし、出会ったからといって、大親友に発展するのではなく、
やはりそれぞれの視点で、少年院での生活や人間関係や生きていく術を体得していく。
(逮捕や裁判なんかないのがスピード感があってよかった)
少年院は、刑務所と異なり、罪を償うのではなく、反省や更正をするところ。
ごめんなさい、もうしません…それだけ?
被害者や遺族にとって、それってどうなんでしょうか。
確かに、子供だから、力の加減や我慢をすることが分からず、
「誤って」殺したり、盗んだりするかもしれません。
けど、この3人、被害者を思い切り憎んでいましたが??
それでも、更正??
アメリカでは、犯罪の内容によっては実名報道されるし、
大人と同じように裁かれるし、同じように服役する。
親元から追い出された神原君と葛城君、いまだ同居する久藤君。
水島君の「銀行強盗」がかなり気になりつつ、【下】に続きます。