ゲームというより、ひとつの芸術品。
★★★★★
発売当時、ドリームキャストのギャルゲーはサターン時代と違って、すでにもう、主人公がセリフ・独白を勝手にしゃべりまくるノベルゲーが過半数を占めるようになっており、主人公も恋愛する気(女の子を口説く気)ナッシングの、あくまで「二人が何気ない日常のなか恋人関係に発展していく物語」を読むだけというか、その張り合いのなさは、主人公と「あの子のハートをゲットするぜ」という気持ちで一体となって、次第に女の子を自分に惚れさせていく恋愛ゲームばかりやってきた俺にとって、そういうノベルゲーがギャルゲーの主流になっていくのは受け入れられるものではなかった。
当時高3だったが、やっぱ俺にとってのギャルゲーは、「せめてゲームの世界でかわいい女の子と高校生活を青春したい」という願望が満たされるものじゃなきゃ意味なかったからだ。プレイヤーそっちのけでベラベラと勝手にセリフ・独白をしゃべりまくる主人公なんて、到底自分の分身とは思えなかったし。
が、この作品だけは、そんな余念を吹き飛ばしてくれるほど、一気に魅了された。BGMがとんでもなく美しくて繊細。雪の町の不思議な物語に、これでもかってほどプレイヤーを浸らせてくれる。
物語りも、よくできた童話のようにファンタジックかつメルヘンチック。最初は抵抗あった等身の低い絵も、この世界観を表すには非常によく合ってる。ミステリアスな展開が気になってぶっ続けプレイしてしまい、「ゲームの世界で恋愛したい」というギャルゲーに求める気持ちなんか吹っ飛んで、ひとつの芸術的な物語作品として魅了された。
この作品がギャルゲーの新たな教科書となり、その後のギャルゲーが「優秀な恋愛物語を描いたビジュアルノベル」が絶対的主流になった感は否めず、そういう意味でも歴史的作品なんじゃないか?それまでのギャルゲーのイメージは世間に白眼視されるほど悪かったが、こういう作品によって何か救われた部分ってのは、当時の業界人やプレイヤーにあったんじゃないかと思う。
恋愛「物語」を読ませて魅了しようとするばかりで、恋愛「自体」をプレイヤーにさせようとするギャルゲーはなくなっていった。そういう流れを作ったほど、美少女ゲームに新たな世界を作った作品だと思う。