ハイデガー研究の到達点
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「環境問題」が地球規模で取り組まなければならない課題であるというコンセンサスが成立してから、かなりの時間が経った。
ところで、エコロジストのある立場は、後期ハイデガーの技術批判を自らの理論的支柱としている。このことの正当性を判断するには当然のことながら、ハイデガーの技術批判を理解していなければならない。だが一口に、「ハイデガーの技術批判」といっても難解なものである。そしてその難解さの拠って来たるところはおそらく、二つある。ひとつは、ハイデガーを理解するには、ハイデガーが前提としている哲学史の知識が要求されること。もうひとつは、ハイデガーが用いることばの重層性(ドイツ語・ラテン語・ギリシア語をひとつのパースペクティヴの下に収める!)についての理解が必要とされることである。
今回、関口浩によって訳出された、技術論をめぐる重要な諸テクストは、日本語として読み易いものである。そして、周到に付された訳注が読者の理解を大いに助けるものとなっている。ハイデガーの技術論を理解するための道具のひとつが我々のものとなった。