私を通りすぎた政治家たち (文春文庫)
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初公開のメモにもとづく恐怖の政治家エンマ帳。
祖父、父がともに参議院議員という環境に育った著者は、幼少時から多種多様な政治関係者に触れてきた。そうした環境で養われた政治家観をもとに、みずからが接した内外の政治家を取り上げ、忌憚のない筆をふるっています。
政治に携わる人間には、権力に付随する責任を自覚してノーブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)を心得ている「政治家(ステーツマン)」と、権力に付随する利益や享楽を優先して追求する「政治屋(ポリティシャン)」の二種類があります。
こうした観点から戦後日本の政治史で、ベスト5の「政治家」といえるのは、
1)吉田茂、2)岸信介、3)佐藤栄作、4)中曾根康弘、5)石原慎太郎
一方、国益より私益を優先したワースト5の「政治屋」といえば、
1)三木武夫、2)小沢一郎、3)田中角栄、4)加藤紘一、5)河野洋平
「著者はリベラルが嫌いなだけだろう」と感じる向きもあるかもしれませんが、そうではありません。
自民党内のリベラルな人は、いささか無節操で、新聞世論に迎合するだけのタイプの政治家が多かった。それに比べて、同じリベラルでも野党にいる人はちょっと違うタイプの政治家もいました。本書の一章「憎めない政治家たち」に登場するのは、不破哲三、上田耕一郎、大出俊といった、反自衛隊反警察の共産党、社会党左派の論客たち。国会答弁でも、何度もやりあった「天敵の仲」ですが、こういう人たちは思想信条が首尾一貫しており、論敵ではあったけれども、どこかで心が通じ合うものを感じていたとのこと。
こうした佐々節がさえるユニークな政治家論。