短篇集 きみのためのバラ (impala e-books)
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彼女はまたにっこりと笑った。この笑いにぼくはつかまっているんだ、と彼は思った―—「きみのためのバラ」
飛行機の予約ミスで足止めされた男が都会の片隅で過ごす空白の時間、唱えると荒ぶる心がたちまち鎮まる、「逃げる人々」の不思議なことば、中米をさすらう若者をとらえた少女のまなざしと温もり。
微かな不安と苛立ちがとめどなく広がるこの世界で、未知への憧れと、確かな絆を信じる人々だけに、奇跡の瞬間はひっそり訪れる。
東京、バリ、沖縄、アマゾナス、ヘルシンキ、パリ、サンドスピット、メキシコ……深々とした読後の余韻に心を解き放ちたくなる8つの場所の物語。
【目次】
都市生活
レギャンの花嫁
連夜
レシタションのはじまり
ヘルシンキ
人生の広場
20マイル四方で唯一のコーヒー豆
きみのためのバラ
【著者】
池澤夏樹
1945年北海道帯広市に生まれる。小学校から後は東京育ち。以後多くの旅を重ね、3年をギリシャで、10年を沖縄で、5年をフランスで過ごして、今は札幌在住。
1987年『スティル・ライフ』で芥川賞を受賞。その後の作品に『マシアス・ギリの失脚』『花を運ぶ妹』『静かな大地』『キップをなくして』『カデナ』『アトミック・ボックス』等。自然と人間の関係について明晰な思索を重ね、数々の作品を生む。2014年末より「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」全30巻の刊行を開始。
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