Sorcerer (Reis)
価格: ¥605
これはちょっと不思議なアルバムだ。マイルスのリーダー作だけど、マイルスのオリジナルは1曲もやってなくて、ウェイン・ショーターの曲が中心。それでもって、<2>はマイルス抜きのクァルテット演奏なのだ。さらに不思議なのは<7>。ほかの曲はすべて黄金のクインテット時代の67年録音なのに、この曲だけは歌手のボブ・ドローをフィーチャーした62年録音で、ベースはポール・チェンバース、ドラムスはジミー・コブ。なんでまた、そんな旧録音が1曲だけ混じっているのかというと、この曲はマイルスとウェイン・ショーターの初共演曲だったからだ。といった具合で、全体にウェイン色の強い作品だが、そこから伺えるのはウェインを媒介にして自身の新しい方向性を見いだそうとするマイルスのしたたかな姿勢。そういう意味では、ここに聴かれる演奏はマイルスとウェインのコラボレーションがもっとも親密だった時代のものといえる。なおジャケット写真の女性は当時マイルスの恋人で、のちに結婚・離婚することになる女優のシシリー・タイソン。(市川正二)