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江戸のミリオンセラー『塵劫記』の魅力―吉田光由の発想

価格: ¥1,575
カテゴリ: 単行本
ブランド: 研成社
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   江戸時代の算術書「塵劫記」にまつわる話題を取り上げて簡明に解説した本である。吉田光由の実家は代々医師を正業に、金融業を副業にしていた。寛永4(1627)年の初版は、実務的な算術の問題を解く方法を4巻26条にまとめている。数年後に5巻40条の改訂版を出したときに、継子立て、ねずみ算、盗人算、油の量り分けなど、パズルとして興味深い問題を追加したと書いてある。

   最後の版は寛永18(1641)年。全面的に書き直し、巻末に12問の解答を出さない問題を含めている。江戸時代から明治時代にかけて、塵劫記はその塵劫という名前のとおりに、長い年月を経ても変わらずに読まれ続けた。海賊本も多く出回ったらしい。また塵劫記の読者の中から、関孝和をはじめとする和算の数学者たちが育っていった。そうした数学者たちの師弟関係を示す系図も出ている。

   吉田光由は塵劫記の執筆の際、それまでの数学書になかった工夫を凝らしたという。たとえば掛け算九九について、中国の数学書は「九九・八十一」から始めているが、彼は一の段からに直し、次いで一の段を省いて「二二が四」から始め、さらに「三二が六」は「二三が六」に含めるなどの工夫をし、36通りだけ暗記すればいいように改めている。

   本書の末尾には、本書の著者が撮影した初版本の印影が約60ページにわたって収めてある。数学史の本としても、パズル史の本としても、十分に楽しめる1冊である。(有澤 誠)