インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

陸奥宗光とその時代

価格: ¥1,925
カテゴリ: 単行本
ブランド: PHP研究所
Amazon.co.jpで確認
   陸奥は、明治を代表する外交官であり、日清戦争の講和条約である下関条約において、全権として活躍したことが知られている。その出自は江戸幕府御三家である紀州藩士であり、それだけに薩長藩閥が取り仕切る明治政府にあってはながく官職に恵まれず、西南戦争の際には政府転覆を画策したとして逮捕の憂き目にも遭っている。廃藩置県直前に紀州藩の藩政改革を断行し、徴兵による近代兵制を整えるなど、その持てる才は明治の俊秀たちの中でも抜けたものがあったが、時代はそれを十分に生かしきれてはいなかった。

   陸奥がその力を存分に発揮し始めるのは、明治政府の永年の懸案であった条約改正の任に当たるようになってからである。そしてその後、下関条約とその後の三国干渉を乗り切るまで、もっともよく陸奥を理解し、その能力を全開にさせたのは伊藤博文だった。その意味で伊藤もまた政治の天才であったことが知れる。彼らによる当時の日本の外交力は世界に冠たるものであり、それが日本を先進国に押し上げたことが、本書からうかがわれる。それはおそらく、日清・日露の両戦争に勝利した以上の役割を果たしたといってもいいのだろう。

   陸奥は死の間際に「健康が回復したならば、総理になって、三十年来の抱負を実現する」と語っていたという。おそらく陸奥が健在であればそれは十分可能だったであろうし、もし陸奥が薩長の出身であれば、それはおそらくすでに果たされていたはずである。明治という日本の近代化を実現した時代を、もうひとつの視点から描いた1冊である。(杉本治人)