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都市のドラマトゥルギー (河出文庫)

価格: ¥1,260
カテゴリ: 文庫
ブランド: 河出書房新社
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ゼロ年代のアーキテクチャ論がこれの焼き回しにしか見えなくなってくる ★★★★★
タイトルにあるとおり、本書は「都市論」である。がしかし、無味乾燥とした「アーキテクチャ」の構築史を追ったものではない。都市には当然複数の「人」が登場し、そこでさまざまな出来事を織りなす。建築と人がインタラクティブに影響し合いながら立ち上がる<盛り場>は決して、建築だけを抽出すればすむ手合いのものではないのだ。

岩波新書『ポスト戦後社会』などの仕事で知られる社会学者吉見俊哉の修士論文を加筆のもと完成した本書、『都市のドラマトゥルギー』は、まさにその出来事としての<盛り場>に焦点を置く。
本書の「売り」は、なんといってもその研究対象にこそあるだろう。序章にて、権田保之助や磯村栄一による先行研究を評価しつつも、盛り場を民衆娯楽や都市機能といった静態としてとらえるそれらと本論には一線をかしている。そうした目線ではどうしても捕らえがたいものがある。各種文献、統計を読み解くことで本書が開かそうとしているのは、市政や資本が意図して構築した構造の上で、民衆らによるその意図外の行動も込みではじめて立ち上がる<盛り場>という一回性の出来事、いわば「都市がいかに演じられたか」であり、言い換えれば当時の<盛り場>各々にあったはずの「ノリ」の研究なのだ。

後に北田暁大がその著作で定式化する<香具師的なるもの>を抑圧することで生まれた明治政府による博覧会の開催をかわきりに、都市流入者らによって演じられた<浅草的なるもの>と関東大震災をきっかけに変貌する<西洋=未来>へ/からの眼差しに担保された<銀座的なるもの>、さらに戦後の闇市など平井玄による回顧録的著作の中でもうかがい知れる60年代のアングラ真っ盛りだった<新宿的なるもの>の世界から、パルコが先導する消費文化にほって遊歩する若者が大挙した<渋谷的なるもの>へ、分析は進行する。

近年、日本のネット文化をアーキテクチャ(=舞台)とネット民(=役者)による偶発的演出としてとらえる「アーキテクチャ論」が流行っているが、本書を読めばこの仕事の影響下にあるということは否めないだろう。