一人の女としてこんなに痛快な人生もそうそうはないであろうと思わせられる一代記。主人公おそめこと上羽秀。京都と東京の社交界の磁場となった「おそめ」のマダム。銀座の「おそめ」の評判を大いに落とすことになった偽洋酒事件も、競合店たちの陰謀ではないかという説さえある。そんな苦労があったにしても、40に差し掛かるくらいまでは、ほとんど翳りのない、右肩上がりの面白い人生である。好きな仕事をし、好きな男と暮らし、好きな人たちに夜ごと囲まれて楽しく飲み交わす。京都と東京を飛行機で颯爽と行き来する「空飛ぶマダム」は、メディアにもとりあげられ、小説や映画にもなった。