全体の響きは暗く、分厚く、ダイナミックで、スケール大きく、リズムはこれでもかと粘る。4台のバンドネオンは、音色が妖しくからまりあい、鋭敏で切れのあるリズムが見事だ。曲目構成は、アストル・ピアソラという強烈な個性を踏まえつつ、タンゴという大きな流れを意識した構成になっている。
聴きものは、4人の若い日本人バンドネオン奏者(小松亮太、北村聡、早川純、川波幸恵)による熱いソロ・メドレー。また、コントラバスの山崎実の秀逸なソロ、違和感なく溶け込む佐竹尚史のボンゴ、とりわけ芯の強い熊田洋のピアノがいい音を出している。
ピアソラが持っていた鋭利なナイフのような冷たさ、とげとげしい攻撃性と皮肉めいた抒情のコントラストとはまた違い、音楽全体から発散される一途で若々しい熱さは、アンサンブル全体に浸透した他ならぬ小松の個性でもある。
通して聴いていると、ある種の「疾走感」がボディブローのように身体に効いてくる。それは「生きることのせつなさ」へと心の内で変化していく。それがタンゴなのかもしれない。(林田直樹)
今回は、見事に成長されたバンドネオンのお弟子さんや、ボンゴ奏者の方も加わり、
新たな魅力を添えた演奏となっています。
忘れてはならないのが、近藤久美子さんのバイオリンです。
感情のこもったバイオリンの音色に、別世界へと誘われて、現実世界に戻ってこれなくなりそうです。(笑)
ほんとうに素晴らしいアルバムです。
ぜひ、お試しください。きっと、コンサートに行きたくなると思いますよ。