この時代に、まっすぐ生きようとする子ども
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いやいや、まずタイトルがすてきです。すっきりして気持ちがいい。
クラスメイトとはある程度の距離をおいてつきあった方がいい。しかし、だからといって無愛想でもいけない。ほどほどの距離感の作法をしることは学校生活を生き延びるための最も必要なスキル。ということにいつからかなってしまいましたが、当事者である生徒たちにとってこれは死活問題なので、もっと若者らしく!なんて言えません。
この主人公ままたそうした距離感で生きようとしています。偶然知り合ったのが、どう見ても中学時代悪さをしていたような服装の生徒。でもこやつがなかなかいい男なのでなんとなく群れていると、運動部から強制的に入部させられそうになり、逃げるようについた嘘で園芸部に入ってしまい、なんの興味もないはずの園芸の日々が始まります。そこに教室に行けず。密かに保健室登校している、頭に箱をかぶった箱男くんが加わって、ようやく部活動が始まる。
二〇〇九年の夏は、『宙のまにまに』とか『GA 芸術科アートデザインクラス』とか、春には『けいおん!』とか、アニメで文化系をたっぷり楽しんでいましたから、『園芸少年』もその中の一つとして記憶に残ります。
この時代に、まっすぐ生きようとする子どもをリアルに描く魚住の腕はさすがです。
運動部物って熱すぎたり、妙にクールだったりしますが、文化系はその点よろしいなあ。
あ、『アート少女』(花形みつる)がありましたね。あれは熱い。でも楽しくはじけているから好き。
友情・・・それは他人を認めることから始まる
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いつも無難に世の中をわたって来た「おれ」。
かなり人相が悪く、学生服のズボンはいつも落としてはいている。
頭は坊主、眉毛はほとんどない「大和田」。
そして、かなり賢く自分の意見をきちんと持っているが、ダンボールを頭にかぶり、いつも相談室で人目を避けて勉強している、BBこと「庄司」。
この3人の高校1年生が植物と出会い、そして園芸部を通して、お互いが変わっていく・・・
そんな青春のさわやかな1ページを垣間見れます。
さて、「BB」はンボールをはずすことができるのでしょうか・・・?
お楽しみです。
引きこもりの高校生が・・・
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・いじめられた経験から、毎日段ボール箱をかぶって相談室登校を続けている子。
・必死に勉強をしてランク上の高校に合格し、中学時代の不良仲間から抜けようとする子。
・これといった楽しみもなく、なんとなく生きている子。
そんな三人が偶然知り合い、付かず離れず 距離を保ちつつかかわり合っていくうち
段々と 友達づきあいを学んでいく様子が、ゆるく書かれていて ほっとします。
スタンドバイミースタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)の弟版といった感じでしょうか?
社交的で元気な子じゃなくても、恐がりでおとなしい子でも、
自分らしくしていれば ちゃんと自分に見合った友達がいつのまにかできる!
……そう思える本です。
すがすがしい読後感。
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ひょんなことから園芸部に入った、クラスメートだったら友達になることはないだろう、共通点が無い3人の高校生たち。
それが花を植えて面倒をみるようになって、園芸に興味をもち、仲間意識も芽生えてくる。
主人公が、通学路の途中にある写真屋さんの店先の手入れされていない植木に心を痛めたり、駅前のきれいに手入れされた花壇を見て、感心したりする心の移り変わりが面白い。
3人の会話やエピソードに出てくる、家族関係も三種三様で興味深かった。一番深刻な問題を抱えていた段ボール少年が三人の中で一番家族関係が暖かかったりして、もっと彼らのバックグラウンドの話も掘り下げてほしかった。
あっという間に読めて、心が温かくなったお話でした。