イラストがもっと見たかった。
★★★★☆
今回は光栄が主人公のせいか、久々にいかにも陰陽師らしい戦いが繰り広げられている。前作(巻の五)に比べると話のテンポも良い。
天竺の女性や、山のどうぶつ版百鬼夜行など、珍しい要素もところどころに盛り込まれている。住吉兼良の忍術のようなワザもなかなか美しい。
惜しむらくは、今回はメディアワークス文庫での発売のため、従来の巻(電撃文庫)に比べ、イラストが少なくなっていること。
もともとこのシリーズは挿絵が少ないのだが、いつもは4ページくらい収録されているカラーイラストが、今回は表紙含めて2ページしか載っていなかったので残念だった。(本文中には挿絵なし)
このシリーズは、文体とイラストのイメージが非常に合っているので、できればイラストをもっと効果的に使用して欲しいと思う。
死してなお残る想いのそれぞれ
★★★★★
「陰陽ノ京」のスピンオフ作品なので、慶滋保胤は最後の方でチラリと顔を見せる程度、伯家時継にいたっては名前が挙がるくらいのもの。本作の主人公は、保胤と同年の甥である賀茂光栄、そして陰陽生の住吉兼良である。
安倍吉平が佐伯貴年と夜釣りに行った帰り道で偶然見つけた、左大臣藤原実頼を害するための呪符。陰陽頭である賀茂保憲は、これをきっかけとした政変を防ぐために、光栄を護衛に遣わす。彼が訪れる先で見たのは、実頼を護るために鬼と戦う、異国の血を引く女性だった。
本編に比べて、貴族の世界に近い話になっている。その分、自由度は低くなりそうなのだが、光栄が奔放な性格なので、堅苦しさはあまり感じない。また、ちまちました謀略的な部分を嫌う彼の性格を、兼良が補っている感じがする。
鬼に襲われる貴人と二人の女性、そして過去の戦乱などが絡み、しっとりとした物語になっている。