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アート・インダストリー―究極のコモディティーを求めて (Arts and Culture Library)

価格: ¥1,680
カテゴリ: 単行本
ブランド: 美学出版
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「アート」の一側面を的確に紹介している。 ★★★★★
タイトルがアーティスト向けに見えないかもしれないが、この本を手に取るアーティストは少なくとも日本にいてはなかなか感じられない自分たちの立ち位置について関心がある人だろう。そういう人にとってはとてもいい本ではないかと思う。
もちろん、単に表現活動でサヴァイヴァルしたいだけなら本書を読む必要はないし、ギャラリストでも本書の記述に異論がある人はいるかもしれない。それは当然で、ここに取り上げられているのがアートの全てであるとは筆者も私も全く考えていない。
以上を前提に、本書の良い点を挙げると、

・マーケットが美術館などの他のシステムに先んじて評価を下すようになってきている現在のアートワールドの仕組みを、実務的な視点で冷静に分析している。
・国際的なキュレーターのハンス・ウルリッヒ・オブリスト、ニューヨークの美術評論家兼ジャーナリストであるリチャード・ヴァイン、中国以外のアジア発の国際アーティストであり(その点で日本人とも共通し)自国ではほとんど展覧会をしておらずまた形態的に「マーケットに乗りにくい」作品を制作しているキム・スージャの3名のインタビューが読める。彼ら彼女らが、それぞれの立場で今何を考えて活動しているか、そしてマーケット先行の現状をどのように捉えているかがわかる。
・世界標準のアートマネジメント(特に、駆け出しの作家・学生のセルフマネジメントを含む)を概観的に学べる。
・執筆の最後の最後まで最新の状況に合わせてアップデートされている。9月のリーマン破綻とダミアン・ハーストのセールス記録はもちろん、10月のロンドンでの各社オークションの壊滅状況まで触れられている。

文化政策的な視点や旧来のアートシステムの知識ばかりでは追いきれない現実のアートワールドの動き。この状況を俯瞰し渡り歩けるようになることを助けるようなアートマネジメントの実務的な知識を簡潔にまとめた、日本語でははじめての本だろう。

英語では様々な本が出ている。とりあえず英語のもので、それなりにしっかりしたものとしてはThe Fine Artist's Career Guide: Making Money in the Arts and Beyond (Business and Legal Forms)がおすすめ。