本書は冒頭から、「中心のある歩き方」をするためには「仙骨を立てる」ことが重要、それには……、と具体的な体の動かしかたをイラスト付きで説明してくれます。全編を通じて初めて聞くアドバイス満載で、こんなにノウハウを披露して大丈夫なのだろうかと心配するくらいです。
また、歩き方を観察して人の性格を大きく3つに分類し、タイプ別に悩みの解消方法を助言したり、それぞれの相性を示しています。歩き方で人格を裁断するのは少し強引な気もしますが、血液型で人間を4つに分類するよりよっぼど説得力がありそうです。
著者が一般の人に歩き方を教えはじめたのは、母親の死がきっかけでした。肝臓の病気で入院していた母親が「健康のために歩きなさい」とドクターに言われ、一生懸命歩いたおかげで、ひざを痛めてしまいました。階段から落ちたのをきっかけに車椅子生活になり、急に元気をなくして半年後に亡くなります。正しい歩き方を知っていたらこんなことにはならなかったのに何もしてやれなかった、というつらい思いが著者に残りました。
それまでトレーナーとしてプロのモデルに歩き方を教えていた著者でしたが、ふつうの人に「身体に負担をかけない歩き方」「美しい歩き方」を教えたい、と思うようになったのです。
著者は言います。「三歩歩いたら健康だな、五歩歩いたら幸せだな」と。
この言葉には、身体に負担をかけない歩き方をしてほしい、という著者の願い、母親に言ってあげられなかった悔恨が凝縮しています。
本書に込められた著者の熱い思いが、きっと、本書を手にした人にも伝わります。そして、著者の言う通り、幸福を呼び寄せる力が湧いてくることでしょう。