奴隷商人
★★★☆☆
Jean Meyerの『Esclaves et Negriers』(1986年)の翻訳。
創元社の「知の再発見」双書の一冊で、豊富な図版が嬉しい。巻末の資料集も貴重。
奴隷の本は日本でもたくさん出ているが、本書は奴隷商人について詳しく書かれている点が貴重。奴隷商人にヨーロッパ人とアフリカ人の二層があったこと、奴隷商人が冷酷な人間というわけではなかったこと、奴隷貿易における損益の可能性など。横暴な白人という単純なイメージを打ち壊すように書かれており、興味深かった。
フランス人研究者による奴隷貿易研究であり、従来のアメリカ・イギリスの研究とは違った姿が描き出されている。その分、アメリカの奴隷制や南北戦争の箇所が弱いが、面白い一冊であった。