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世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて (岩波新書)

価格: ¥798
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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良くも悪くも、21世紀の柄谷行人 ★★★☆☆
 「マルクス その可能性の中心」以降の著者の資本主義批判の歩みが凝縮された本。今世紀に入ってからの柄谷行人の思考は、達成できた点もできていない点も、ある程度この本を読んで掴むことができると思う。読後に感じたポイントは以下です。

1)かつて著者は上述書で価値交換論の観点から「資本論」批判を行うことを問うたが、国家論や代表制の論理についても交換論による読み替えを試みている。この点は著者の思考の更新が感じられて新鮮だった。

2)現在、グローバル資本主義の不安定要素となっている金融資本に関する分析が殆どない点が気になった。郵政民営化や三角合併問題を挙げるまでもなく、為替政策や資本投資の自由化など、金融資本のコントロール自体が国富だけでなくミクロの産業資本や家計の経済環境を左右している状況を、剰余価値説の読み替え/批判だけでどこまで掴むことができるのかは疑問だ。著者がカテゴライズする産業資本や(産業革命以前の)商人資本とは違った固有の分析が必要になるのではないか。

3)昔から一貫しているが、B.アンダーソンを引きながらネーションを想像的共同体として論じている。このこと自体は問題ではないのだが、ネーションの実態の無さを指摘するときに「想像」という言葉を使う一方で、決して達成されない「理念」としてのアソシエーショニズムや世界共和国についても、「想像」という言葉を著者は使っている。でも、この二つの「想像」は次元の違うものだ。前者の「想像」は国民国家において現実に共有されているのに対し、後者は(キツイ言い方だが)事実上、柄谷読者に限られている。

4)そもそも「世界共和国」というのは何なのかが語られない。カント的理念として「達成されるものではない」から詳細に語る必要はないのかもしれないが、そこを書かないのは一冊の本として余りにも尻すぼみではないか。実際、柄谷流アソシエーショニズムの試行実験だったNAMの崩壊を経験した著者が、敢えてアソシエーショニズムを「理念」として遠く設定し直した結果、「書けなくなった」だけではないか。

 なお、最近は国際金融投資に低率のトービン税をかけて国連予算にしようとする動きが英仏あたりから出ている。これを国際機関の国際政府化(=官僚機構の国際政府化)の端緒として見る向きもあるが、著者の語る「世界共和国」の代わりに、100年くらい後に単にでかい官僚機構が出来上がってるだけの可能性だってあるのだ。そういった歴史の失敗に対しても「世界共和国は達成されない」と統制的理念の立場から批判することは勿論可能だが、でも今それをやるのはズルくないだろうか。僕はそのような統制的「思考」よりも、たとえ失敗に終わったとしても単なる「試行」の方が今は大事だと思う。幸い、NAMが濃厚に持っていたような新左翼的な空気や言説とは無縁の気軽さを持ったミクロな実験が、世の中には色々と存在している。(例、LETSを導入している商店街なんてアチコチにある。)そして、一度の失敗に懲りずに、もう一度統制的「思考」と「試行」を並立しようとするズ太さと元気を柄谷氏にも取り戻してほしい。
理想論 ★☆☆☆☆
最終的に著者はカント的な観点から、世界共和国実現のために、既存の国家がそれらを統括する機関(国際連合等)に主権を譲渡するよう尽くさねばならないと主張しています。しかし、国家が主権を放棄するということは、武力を各国が持たないことと同義であり、1つの国が主権を放棄すればその国が他国に容易に侵略されてしまうことは予想できます。従って、各々の国家が主権を国際連合等に譲渡することはあり得ないと私は考えます。ですから、はっきり言ってしまえば、理想論から出た思想は所詮は理想論ということです。
柄谷思想の入門書、読めば読むほど味が出る ★★★★★
柄谷思想の入門書といえる。平易な言葉で思想、歴史、世界を語る。
全体的に出来すぎている感があり、さらっと読めて物足りないと思うかも知れない。
しかしここからその他の柄谷本に入っていけば、その中身の深さがわかる。
読めば読むほど味が出る。
「トランスクリティーク」からの新書版 ★★★★★
「NAM原理」の続著としてこの新書を購読。
全体に哲学因りの記述だが、生体的な内容にも読み取れた。
むしろ知られなかった生態系のひとつのように読み解くべきかもしれない。

第四部は現代から現在にいたるまでの問題が記述されている。
先端経済が無視できない、一度は突破すべき課題だろう。

但し本書から、世界共和国の概念を捉えるのは難しい。
表題がイマイチ ★★★★★
正直、世界共和国やアソシエーショニズムを云々するくだりに関しては、説得力を感じることができなかった。言い換えれば、「そっちの方向で考えてみようか」とは思えなかったということである。

しかし、個人的には共同体論・国民国家論に関心を持っているので、それまでの「資本=ネーション=国家という接合体」の分析には一読の価値があった。マルクス主義者だの右翼左翼だのといった不毛なレッテル貼りはとりあえず措いて、広く近代世界について考えたいという人なら読んでみてもいいのではないか。

柄谷行人の愛読者であれば特に新味のない内容かもしれない。だがいっぽう、柄谷に取り立てて注意を払ってきたことのない評者のような者にとっては、読みやすさという点についてもかなり配慮の行き届いた良書であると思われる。