著者のカメに対する深い愛情を感じる一冊
★★★★☆
この方の本は『最新恐竜学』に続いて二冊目。恐竜に比べて亀にはあまり興味がなかったが、『最新恐竜学』が面白かったのでこの本も買ってしまった。
本書はまず現生の亀を解剖学、生理学、行動学的に平易に説明した後、亀が辿ってきた2億年の道程を詳しく解説している。むろん亀も環境を無視しては生きていけない。亀を通して時代時代の棲息環境にもスポットを当てているのも有り難い。
三畳紀中期以前の亀については謎が多いが、著者は亀の起源を従来の説である無弓類ではなく双弓類、その中でも恐竜や鰐を含む主竜類であると考え、その根拠を説得力豊かに説明している。この箇所を読むと、何やら著者の亀への深い愛を感じ、つい微笑んでしまう。
現在、多くの生物が絶滅の危機に頻し、亀も例外ではない。亀に対する愛情豊かな本書を読んで、多くの方がこの世界に優しくなり、亀が今後も生きていけることを期待する。
亀もなかなか興味深い生き物だと思いました。
★★★★☆
僕は、亀の甲羅が背骨と肋骨等の変形したものだという事すら知らない
ヌルい読者だったので、亀の構造からして驚きと知識になった事が多か
ったです。
著者は化石亀の研究者なので、現生亀についての記述は少ないです。
亀が亀として現れてから、恐竜や哺乳類とともに生活してきた様子を知
りたい方にお薦めです。
また、著者は経済学部から古生物学に移った方なので、その様な生き方
を模索している方にも良いかもしれません。
専門家が書いた信頼できるカメのすべて
★★★★★
まず なぜカメは甲羅が脱げないのか でカメの基本を説いたあと,オサガメという名の海の怪物が紹介され,このリアリティで完全にカメのとりこになる.そうして2億3000年の昔の先祖から現生のカメまでの長い複雑な旅が始まる.著者の文章は明解で読み易く,更に現役の専門家ならではの説得力がある.また中生代からの大陸の分布など必要な図が必ず用意されていて理解を助けている.この化石カメ学の部分はまさに圧巻で,著者の実力の程を思い知らせてくれる.最後は人間に食べられて絶滅してゆくカメたちの悲しい話で,そう言えばスッポンのスープはうまいよな,と思いながらもカメが可哀想な気持になる.最近読んだ科学書の中で断然素晴らしい本.これさえあれば,カメのことは殆どすべて判る.強く推薦.
カメ学に興味のある読者必読
★★★★★
気鋭のカメ古生物学者である平山廉氏のカメ類の形態進化に的を絞った好著.カメ類と恐竜や哺乳類との進化学的な対比,現生カメ類への進化の筋道等が詳しく解説され非常に興味深い.カメ類に関して動物学的,あるいは古生物学的な関心のあるカメ好きには文句なく勧められるし,内容も比較的平易で,生物学的な知識が乏しい読者にも配慮されている.あまり一般向けの文章では詳しく紹介されたことがない,日本の化石カメ類に関する記述が詳しいのもうれしい.また.小田隆氏の復元図も非常に雰囲気が出ていて非常に良い.やはり,一般向けの本ではこうした復元画は不可欠であろう.
ただ気になったのは,著者が古生物学の研究者ということで,甲の各部の名称等は書評子がなじみの有る現生カメ類のターミノロジーとかなり異なっており,どちらかと言えばそちらに親しんでいるであろう一般の読者には,解りにくいかもしれない.これは筆者の責任ではないが出版社からのコメントの「個体」が「固体」となっているのはいただけない。