J.A.T.P.コンサートの主宰で知られるヴァーヴ・レコードのノーマン・グランツは大物同士の共演盤を数多く録音したが、なかでもエラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングの共演盤は白眉といっていい。なにしろジャズ・ヴォーカルのファースト・レディとジャズ・ヴォーカルの元祖でありキング・オブ・ジャズの顔合わせである。これ以上ぜいたくなデュエットはちょっとほかに思いつかない。 ここでの2人は終始リラックスしたムードで淡々とデュエットを行なっていて、聴く者を心底なごませる。その歌声は素朴で暖かく、なにか歌の原点にふれたような気分になる。曲はすべてスタンダードなので、その点でも親しみやすい。あのエラがルイの前では愛らしい乙女のように映るから不思議だ。ルイの輝かしいトランペットも聴ける。バックはオスカー・ピーターソン・トリオにバディ・リッチを加えたカルテットで、これまた文句のつけようがない布陣。録音は1956年。このアルバムが評判になって、翌57年には続編の『Ella & Louis Again』が録音された。(市川正二)