人生論の人生論
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数々の人生論を批評しながら著者の人生論を展開する、といった趣旨の本です。おおまかにいえば、楽しければそれでいいじゃん的な価値を退け、だからといって「神」や「スピリチュアル」に安易に身をゆだねるのでもなく、また、「どうせ死ぬのだから」とひとりよがりな哲学を深めることに終始するのもどうかと思うので、与えられた人生を「まじめ」に精一杯に生きぬき、具体的な仕事をこなし、自己を高めながらも自分のまわりの特定の人のために出来ることの意味を真摯に問いつめる、というスタンスで様々な本が紹介されていきます。
ホリエモンはむろん最低最悪のケースなわけですが、しかし夢に向かって粉骨砕身する若き企業経営者はちゃんと評価されます。「霊」にはあくまで否定的ですが、それに導かれながらがんばる人には好意的です。どう考えても人生は無意味だ、という神なき時代の痛々しい認識から出発しつつ、けれどなお、なのになお、世界に満ち溢れている(かもしれない!)「意味」を探すことをあきらめません。こういうの、大好きです。
オチは、またもやな吉本隆明大先輩の名言なわけですが、著者ならではのちょっとしたアレンジを加えたりもしています。いずれにせよ、いつも通りの毒舌たっぷりの批評がさえつつ最後にしんみりさせるその話芸をきいていて、夢も希望も特にもてはしませんが、とても元気になりました。