画期的な本です
★★★★★
さて、同名の本は既に同じ岩波から宮本憲一から出版されている。今回は岡氏による物である。最初に、新古典派、マルクス、エントロピー、制度学派などの公害に関するサーヴェイを行い、日本における公害分析として名高い都留重人にまで言及が及んでいることは素晴らしい事である。内容も今時のテキストとしてはかなり高度な内容となっており、ミクロ経済学の基礎的知識が必要になるが、無くても読み進めることは出来ると思う。分析内容が多岐にわたっているので鳥瞰する意味でも素晴らしい内容だと思う。これだけ各学派をサーヴェイして更に分析するということはなかなか出来ない。前著に比べて格段の進歩を遂げている。誉めても誉めすぎると言う言葉が当てはまらない。これだけ素晴らしいテキストだと思う。
真の意味での教科書
★★★★★
前著『環境政策論』と、新古典派の経済理論で武装された環境経済学
が役に立たず、批判している点では、同様である。本書では、さらに進
めて、環境問題に役立つ分析視角をマルクス経済学、都留重人、カップ
らの制度学派、エントロピー経済学、ミシャンの倫理的厚生経済学を検
討することによって、探り出している。都留重人が言う価値的なものと
素材的なものとの乖離、矛盾を重視したり、ミシャンを制度学派の立場
に近いことを位置づけたり、前著までには明確には見られない(著者の
中にはあったと思われるが)点を打ち出している。
本書も、定説を易しく書いた本ではない。著者が研究の先端に立った
上で、それを広く読まれることを望んで書かれたものである。本書のよ
うな本を本来は教科書と呼ぶのではないか、と思えた。
環境経済学 上級編
★★★★☆
中身は環境経済学の議論としても、日本語としても本当に難しい。この本はある程度環境経済学を学んだ人向けである。理論経済学やその他諸々の前提知識が無いと多少厳しいかもしれない。この本の内容を大雑把に言うと、環境経済学の学派ごとの考え方の整理、費用便益分析の幅広い考察、実際の環境政策の論理的分析の3つで構成されている。うまく言葉巧みにまとめられているが読みにくい。議論が高度ということもあり致し方ないかもしれないが…。しかし、環境経済学の深い知見に触れることができることは確かである。