百学連環 「つなぐ」意識
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前著『グッド・ルッキング』に受けた衝撃はすさまじかったが、今回の『ヴィジュアル・アナロジー』も恐ろしい質量で迫ってくる。
前作は著者自身による「著作インデックス」という形で、その意味ではスタフォード氏の言う「絵が言葉より劣ったものだというのはおかしい」という、その論旨が明確に伝わってきた。
ではそれを実際にやるとどうなるか――というのが『ヴィジュアル・アナロジー』である。光学・ライプニッツ・アナロジーを通して、ひたすら「肯定的に」、「違う違う」と喧(かまびす)しい時代に、イメージ(図像)を使いながら「同じ」を探っていくその様は、感動的であり、これから先の「批評」とは、こうあるべきだ――という素晴らしいモデルケースである。
「我々だれしも、蘇生と協和の魔の光景に魅了されずにはいない。我々だれしもが、いやなものの消滅を、好むものの再現を願わずにはいない。当然ではないか。」(p138)
これを楽観的すぎる――といって批判する「否定と反駁の生活習慣病を病む」人間ではしょうがない。「見ると分かるという絵(イメージ)の持つ力」を最大限に使って、「違う」もの同士を「つないで」いこうという百学を連環させる意識――そして何より、スタフォード氏の「明るさ」。これだろう、いま一番足りないのは。
その「明るさ」を知るためだけにでも、同書の「序」を読んでほしい。「ちがいの只中に同じ」を見るという朗らかな意識、これだけが何かを「先に」進めるのではないだろうか。