1人の作曲家の楽曲を集めたソングブック形式の作品として、
本盤は出色の出来なのではないだろうか?
ブックレットには武満さんからの謝辞が記されているが、
ご本人からのラヴコールで実現したコラボレーションらしく、
メロディとヴォーカルの相性は抜群だ。
ただし、制作に武満さんは参加されていないため、
服部隆之、コシミハル、羽田健太郎、佐藤允彦ら、
アレンジャー諸氏の仕事ぶりも大いに光っている。
また、職業作詞家をほとんど起用していないことも、
本盤の楽曲を商業音楽からやや遠い所で鳴り響かせるのに
一役買っているように思う。
駄曲は1曲もないのだが、あえて好みの曲を挙げてみよう。
ゆったりと大きなメロディが心に優しい01., 02.,
まさに天上の音楽のように気高く美しいバラッド 05.,
谷川俊太郎さんのリリックと羽田健太郎さんのピアノが
大らかなメロディを彩るような08.,
「~ぜ」という口調が続く武満さんのリリックが楽しい09.,
など、名曲多し。
折にふれて楽しみたい、奥の深いアルバムだ。