しかし、思いがけないところから励ましの言葉をもらったおかげで、落ち込んでいたキリンは気づく。みんなと違っているなら「みんなと違う音楽があればいいだけ」だと。こうしてさっそくジェラルドは(コオロギの伴奏つきで)月の音楽に合わせてとび跳ねたり、シャッセしたりブギを踊ったりする。「赤鼻のトナカイ」の物語ではないが、気まぐれな「友だち」はすぐに、ジェラルドのことをまた好きになってもいいな、と思うようになる。
韻律のよい、風刺漫画のような痛快なこの物語を書いたのは『Rumble in the Jungle』など多くの絵本作品を生みだしたジャイルズ・アンドレーエ。彼はこの作品で、人は誰でも―― たとえみんなと違う鳴き方をするコオロギのビートに合わせて歩く子どもであっても―― すばらしい可能性を秘めていることを、自信のない幼い読者に教えてくれる。韻律にはやや荒削りなところが見られるが、ガイ・パーカー=リースの手になる大胆で色鮮やかな水彩画は、きっと読者の心をとらえ安らぎを与えるに違いない。(Emilie Coulter, Amazon.com)