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まなざしの地獄

価格: ¥1,260
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: 河出書房新社
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見田宗介 ★★★★★
 見田宗介が書き残したモノグラフの再版。犯人が眼差しの地獄から逃れようとした過去から、眼差しの不在に耐えられない現在へ。この社会変化をどのように理論化するかが問われている。見田、大澤ともに秋葉原の無差別殺人を、現代の非実体的な抽象的システムへの反乱であると考えている。これ以上、匿名の「誰でもよかった」犠牲者を生み出さないためにも、いまここでの生き難さの原因を、強靭な思考力と分析力で提示することが必要だろう。湯浅誠の言う、あまりに強すぎる日本人の自己責任感へのしがみつきが、このシステムに対する批判的分析を妨げ延命させているのではないか。この再版を契機に、半端な構造改革を超え、抜本的な変革への期待が急激に高まることを期待したい。
過去が現在を照射する ★★★★☆
大澤真幸氏の分かりやすい解説と併せ、社会学的思考の醍醐味(凄み)を感じさせる一書。1965年と1973年に発表された二論考が収められているが、いずれも内容は古さを感じさせない。なお、本書で示された認識枠組みを今日的状況に当てはめたものとして、例えば見田氏の朝日新聞2008年12月31日付論説「リアリティーに飢える人々」がある。(こちらもまた素晴らしい考察である。)

両氏の考察を自分なりにまとめれば、本書に登場するN・N(集団就職者)も、昨年6月の秋葉原殺傷事件のT・K(派遣労働者)も、「家郷から、そして都市から、二重にしめ出された人間として、境界人というよりはむしろ、二つの社会の裂け目に生きることを強いられ」た(32頁)のであるが(期せずして二人とも青森県出身)、二人の違いは抽象化して云えば、前者がいわば世間という「まなざしの地獄」に抗し得なかったのに対し、後者は「まなざしの不在」に耐えられなかったという点にある。また、N・Nの時代(高度成長期)にあっては、失われた家郷は都市においていわば擬似的に縮小再生産(核家族)され得たのに対し、今日(未来不在の時代)にあってはそれすらも解体の方向にあり、例えば「ネット心中」に代表されるようないわば擬似ネット家族のようなものがヴァーチャルに浮遊しているに過ぎない。

われわれは如何なる時代を生きているのか、またこの荒涼たる時代を如何に生きねばならないのか、まずは確認することから始めたい。