詩的で優しく美しい中にもファンタジーに欠かせない要素がしっかりと
詰まり、胸躍らせる冒険物語に仕上げているリンドグレーンの筆の素晴ら
しさにはただただ感動するばかり。里親に冷たくされて育ったミオがやっと
出会えた本当の父親(「はるかな国」の王)を想いながら、戦いに立ち向か
う姿には胸を打たれます。
少し前、同じ単行本スタイルで再販された時、新しいのを買い直そうと
手にとっては棚に戻すことを何度も繰り返しました。
あまりに好きな本だから、私の手に二冊残るよりは、もう一人の子に
大事にされてもらいたいから・・・。
これから何冊本を読もうと、永遠に「世界でいちばん好きな本」です。
しかし、これはそう言う単純な話ではないのだ。なぜ王様は大好きなお友達のお父さんによく似ているけどもっときれいで、もっとやさしくボッセの願いを全て叶えてくれるのか。なぜ美しい白馬は大好きだったビール工場の老馬と同じ目つきをしているのか。なぜどの家もみなおとぎ話に出てくるような家なのか。なぜ悪夢に出てくるような迷路に何度も迷い込むのか。作者はこういう描写くり返す。児童文学だし、まさかと思いつつ読み続けると、最後のページでやはりすべてはボッセのゆめなのだと確信させられる。あまりにもせつない話なのである。
また夢ちはどういうものなのか作者が研究していることが良く分かる。
ぜひ御一読を。
懐かしいおとぎ話のようなストーリーと、詩のような情景描写があいまって、心地よい読後感が得られます。ポプラの歌声、飢餓牢の闇の深さ、カトーの抱える苦しみなどの場面は忘れがたい印象を残します。
小学校上級生以上。中学生には物足りないかもしれません。