本書はあくまで「シネマガイド」であって、映画評論ではない。欠点をあげつらってバッサリ切り捨てるのではなく、どんなに些細なことでもその映画の優れている点をすくい上げる。1本の映画につき長くて2ページ、短ければ半ページという限られた字数の中に、著者独自の各作品に対する率直な感想と映画の楽しみ方が詰まっている。本書を読めば、すぐさま映画館(ビデオ屋)へ急がねばと居ても立ってもいられなくなるだろう。
著者は本書を「こいつが紹介しているということは、自分とは合わない映画だな」という「見なくていい映画リストとして活用」してもらっても全然かまわないと言う。だが、「映画に貴賎はない」と言いきる著者の言葉は、魅力あふれる映画の世界に私たちを導いてくれるだろう。(深澤晴彦)