【セブン-イレブンで24時間受取りOK・送料0円!】 著者/訳者名:難波功士/著 出版社名:筑摩書房 シリーズ名:ちくま新書 763 発行年月:2009年01月 関連キーワード:ソウカン ノ シヤカイシ チクマ シンシヨ 763 そうかん の しやかいし ちくま しんしよ 763、 チクマ シヨボウ チクマシヨボウ 4604 ちくま しよぼう ちくましよぼう 4604、 チクマ シヨボウ チクマシヨボウ 4604 ちくま しよぼう ちくましよぼう 4604 創刊号をひもとくこと、それは封印された過去を追体験することに他ならない。そこには、時代の情念がねばりつき、出版人の生あったかいドラマが織り込まれている。本書では、「an・an」「POPEYE」「non・no」「JJ」「CanCam」「Olive」「Hot‐Dog PRESS」「BOON」「GON!」「egg」「小悪魔ageha」などなど、70年代以降の若者雑誌をたどりながら、読者がメディアをどのように受容してきたのかをみていく。
創刊という「暗闇への跳躍」
★★★★☆
ふだん読まない雑誌を開いたときに感じる独特の疎外感がある。各雑誌は、毎号歴史を積み重ねていくことで誌面に個有の「磁場」を形成する。だが一方、雑誌の側も「創刊」するときは一種の賭けを演じているのだ。時代の風向きを読めていなければ、それは即沈没(=廃刊)をも招きかねない。一つの雑誌が生まれるまでには多くの労力とお金が費やされているため、その結晶である「創刊号」には以後の続刊にはない緊張感がある。本書『創刊の社会史』は、「創刊号フェチ」を自負する著者と巡る創刊号タイムトリップだ。
今では常識というか、もはやそれなしではファッション誌が成り立たないという入り広告やタイアップの仕組みであるが、すべては『an・an』を震源地に始まったというのがわかる。児童向け雑誌と既婚女性向け雑誌のその間にあった隙間を切り開いたのだが、そこに他の版元が『non・no』や『JJ』といった雑誌で殺到してきて切磋琢磨していくこととなる。昨今の落ち目の売れ行きにも関わらず、「アンノン族」という言葉だけは今も通じるのは歴史の皮肉だろうか。
また雑誌は人と人をめぐり合わせる「場」でもある。評者も愛読する『Quick Japan』創刊号では竹熊健太郎に岡崎京子、おたく命名者の中森明夫、『完全自殺マニュアル』の鶴見済、さらにはのちに都知事選に立候補した「私もビビる」の外山恒一まで名を連ねる豪華絢爛ぶり。闇鍋のようなごった煮だ。
ただ注意すべきは、あくまで本書のあつかう「創刊」が今昔の若者向けファッション雑誌・ライフスタイル雑誌限定であることだ。総合誌などのお堅いメディアはあつかっていない。
しかし、若者雑誌にも若者雑誌だけの「哀愁」がある。時がたてば、文句なしにダサくなってしまうのだ。雑誌の流す情報とはフロー型で、本来は鮮度が命だ。そのため10年前、いや5年前ですらもうすでに「ダサい」領域に入ってしまう。だが、フラジャイルであるがゆえに積もる愛情というのもある。零落著しい雑誌メディアへの愛を感じる一冊だ。
オタク系
★☆☆☆☆
オタク系の人が自分の趣味の中で書かれた本ですね。
購入時に、雑誌の時代背景になにがあり、なにが起きていたかをもっと知りたかったなーと感じています。
若者誌の戦後史
★★★★☆
『an・an』や『POPYEY』から最近のギャル(男)雑誌まで、戦後日本における主に若者のファッション・ライフスタイル誌の興亡戦を跡付けた作品である。各誌の創刊事情と当時の社会的な雰囲気を記述することに徹しているため、分析が弱いが、それでも、雑誌の想定読者の絞込み(マーケティング)が進化しまたその対象の若年化が進行していること、海外事情の紹介よりも国内の男女の「モテ」に熱意を注ぐ傾向が強いこと、総じて、若者雑誌が次第に個別分化し「雑」誌的でなくなってきていること(著者はこうした風潮を嘆く)、などが指摘され、それなりになるほど、と思った。創刊号の意気込みあふれる表紙や、登場する有名人や組まれる特集なども意外性があり興味深く(この雑誌にあの人が!あの雑誌でかつてこんな記事が!)、サブカルうんちくを学ぶのにも有益である。