ワインに取り憑かれた財閥
★★★☆☆
主に次の3つの内容で構成されています。金融を柱とする事業家としてのロスチャイルド一族の話、ボルドーのワインの歴史、ロスチャイルド家が所有するラフィットとムートンの争い。何一つ不自由せず暮らしてきた富豪が、ワイン事業に貪欲に熱中する姿は、ワインの魅力を間接的に物語っています。ワイン造りに捧げた彼等の情熱を知れば、上記のワインが何故人々を惹き付けるのか分かります。1976年に開催されたカリフォルニアワインとフランスワインのブラインド・テイスティングの話などは大変興味深く、ワインが好きな方は十分楽しめると思います。しかし、一つ残念であるのは、ロスチャイルド一族の金融事業家としての話が単調で長いことです。実際にはもっと興味深い逸話が多くあるのですが、何故かあまり触れられていません。
生き生きした歴史本
★★★★★
ワインの歴史にふれた本は、たいがい、難しいのですが、これは登場人物が生き生きと描かれ、読み物として面白い。知られざるロスチャイルド家の伝説にふれると、ますますワインが飲みたくなります。高くて買えないとしても。
ワインとロスチャイルド家を結ぶ物語
★★★★★
ワイン漫画「神の雫」や「ソムリエール」に興味を覚えるのは、あるワインの生い立ちから、誕生の背景までをストーリーとして語っているだろう。その意味で、本書もボルドー5大シャトーのうちロスチャイルド家が所有するラフィットとムートンのストーリーだ。
本書はロスチャイルド家の勃興から始まるが、不思議と退屈感がない、それは著者ヨアヒム・クルツの飽きさせない構成、翻訳者の小気味の良い翻訳にあるだろう。
圧巻は、ムートンをブランドワインとして成功させたフィリップ・ド・ロスチャイルドのストーリー、著者はこれが書きたくてロスチャイルド家の始まりにまで遡ったのではないかと思われるほど、ナチスによる迫害、1級シャトーを認めさせるための執念などなど、活き活きと描かれている。
ラフィット、ムートンを違った点で楽しめるおススメの一冊です。