悪くはないのですが。
★★★☆☆
「第一級のワイン」
「ツタンカーメン発掘」
「スエズ運河買収」
といった歴史とロスチャイルド家の関わりから始まり、
一族が大きくなっていく過程にも触れられています。
近年(出版当時)の状況なども書かれているので、
ロスチャイルド家について幅広く知るために良い本だと思います。
知らないことばかりでしたし、
勉強になりました。
(日本とロスチャイルド家の関わりなども)
ただ、残念なのは、
時代の説明が時系列でない(行ったり来たり)ということと、
最も重視して欲しかった
マイヤー・アムシェルとネイサン・マイヤーについての記述が少なすぎたことです。
読んで良かったとは思いましたが、
個人的にはあまり好みではなかったです。
シオニズムに反対していたロスチャイルド家
★★★★☆
世界で最も有名であり、かつ、裕福な家系の一つであるロスチャイルド家は、ユダヤ人の家系である。このことはよく知られた史実である。ロスチャイルド家を語る場合、ユダヤの歴史と密接に関係してくる。しかし、本書では、ロスチャイルド家の商業活動と、ユダヤ人としてのロスチャイルド家を分けて解説している。その結果、内容が良く整理されており、読みやすい。
ユダヤ人としてのロスチャイルド家は、当初、シオニズム運動に反対していた。一族の中に「現代イスラエルの父」と呼ばれるエドモンは、ユダヤ人のパレスチナへの入植活動を支援していた。それにもかかわらず、シオニズムには反対だったという。イスラエル国家の建設を目指すシオニズム運動は、受け入れがたいものだった。国境を越える国際金融資本を操る、多国籍企業であるロスチャイルド家にとって、国を創って国境の内側に閉じこもろうとする民族主義は本質的に矛盾する考え方であった。そのため、ロスチャイルド家が、当初、シオニズムに反対するための組織さえ作っていたという話は、非常に興味深い。
他方、フランクフルトを皮切りに発展したロスチャイルド家は、ロンドン、パリ、ウィーン、ナポリと欧州5都市で活動する。国境を越え、情報を共有する多国籍企業であった。多くの企業を作り、冨を蓄積し、豪華な館に居住した大財閥の一族には、現在、最盛期の財力はない。その背景の一つとして、欧州において第一次世界大戦前後に出来上がった税制があったという。特権的な貴族といえども、過酷な税金から逃れられなかったのである。
また、ツタンカーメン王墓発掘、ノーベルの爆薬の新開発、日露戦争の日本の資金調達など様々な歴史の場面で一族が関わってきたエピソードも面白い。
ロスチャイルド家の歴史を概観するには、お勧めの書物である。(2009/7/10)
広範囲な政治経済産業文化の話
★★★★★
今回の世界金融危機の解説を読んでも、経歴のわからないカタカナ名の会社や用語がたくさん出てきてとっつきにくくて困るのだが、
古い時代からの国際的な財閥を軸にすると、金融も歴史的な形成過程があるということを感じることができる。
一族の話とは言え、広範囲な政治経済産業文化の話でもあって、とてもおもしろかった。
ユダヤ人迫害の話は恐ろしい。
地味ながらいい仕事
★★★★☆
この本は地味である。「赤い盾」広瀬隆のような華麗さはない。
しかし、新書という短い紙面で十分に一族の肖像に関する意味のある表現をしている。
ロスチャイルド内での内紛が一番面白かった。これはいい仕事だ。
ロスチャイルドの世界系譜。
★★★★★
大学の宗教学でオススメされた本です。最初の印象は、「薄いな」って感じだったんですが、読み始めると大変中身は濃く、ロスチャイルド家の世界が広がっていきました。
ユダヤ人という事で何度も差別や偏見を受け、しかしそんな圧迫に屈することなく、時にはそれを逆手にとってビジネスを先駆けて巨大化するロスチャイルド家の力には圧倒されるものがあります。また、個人個人が不思議な趣味を持っていたり、だからといってそれが趣味だけで終わらずビジネスにまで結びつくところがロスチャイルド家らしくて好感をもてました。
いつの時代もタイミングを見計らったり、情報を幅広く、手早く手に入れるなどの『ビジネスらしいビジネス』を理想的な形で行っていくロスチャイルド家の手腕はある意味読んでいてすっきりするようなものを感じます。
世界に散ったロスチャイルド家と、世界に広がったにもかかわらず失われることのない家族の絆の素晴らしさ、大切さを感じます。
また、日露戦争におけるロスチャイルド家と日本の関係も大変面白いものがあります。
ユダヤ人についての参考書籍という事だったのですが、家族の絆やビジネスの進め方など、色々な勉強になりました。
また、文体自体も学術書のようなとっつきにくい感じではなく、文学のような感覚で読めるところも魅力に感じました。大変参考になりました。