複数の兵士による戦記物"ボトムズ"
★★★★★
第1巻目はコマンドフォークト部隊創設までとして"フェレス・ホーン"という女性の通信特派記者が記録した物語進行となっています。
何とか編といった章立て名が何であるか、始めは分かりませんでしたが巻頭の地図を見て各エピソードの舞台となった地名である事が分かりました。
大きな章立て数が4章分なのでフォークト部隊は6名なのに各一人ずつのエピソードであるならば数が合わないなと思っていましたが読んでみて納得しました。
ティタデル編は22歳で200機以上の撃破数の若きエース"レーン大尉"を主としたエピソード。
私としては"レーン大尉"と機動部隊の衛生中隊に所属していたことがある少女"カナワ"に戦場で出会う辺りから結構、物語として入り込めるようになりました。
トリ二ティ編では"ボルク少佐"。開発研究者でありながら自らATのテストパイロットをするといった特異な経歴とその苦悩と葛藤のエピソードです。
フィヨルド編は"ゼトラ大尉"。"スナイパーライフル"の使い手です。そして敵対している"カシェキン少佐"との忍耐にせまる一機撃ちのエピソード。
そしてプラヴェ編。"ノルデン少佐"率いる部隊の戦果は全軍一を誇る。記者の"フェレス"との取材のやりとりのエピソードもあります。
この章で超高速鉄鋼弾を撃てる"アンチ・マテリアル・キャノン"を使いこなす"ボックメッサー大尉"も少し登場しています。
結局、"フォークト"は(この時点では)戦闘総監の立場であるので全章に少しずつ登場となります。
プラヴェ編で"フォークト"自身も大きな活躍をする事になりますが…。
撤収作戦を上手く成功させる為に特別部隊として"フォークト"以下、全6人が集合!
作戦終了後の部隊の行方は…で物語は"Novel JAPAN(ノベルジャパン)"で新章へ突入しているようです。
兵士のAT乗り臭さは十分にえがかれていると思います。"レーン大尉"が"トータス"に搭乗などもボトムズらしいです。
"キリコ"が登場する物語とは方向性の異なる、ある前線部隊の戦記物語として楽しめました。
この一冊、金6ギルダンなり。
★★★☆☆
一応体裁としてはホビージャパン誌に連載されているジオラマストーリーに登場するフォークト隊メンバーたちの部隊結成以前の物語ということになっていて、各章ごとにメンバー1人にスポットが当たって、その人物の従事した作戦行動を描く連作短編という形をとっている。これさえ読めば、伝説のスーパーエースたちの人物像が厚みを増すはず……なのだけれど。なんだこのバランスの悪い変な感じ! 描かれる人間ドラマや人物像は異様なまでにうすっぺらかつ典型的で(特に女性描写は笑っちゃうほど)、読み終わっても結局その人物は設定に書かれている数行以上を語りかけてこない。のだけれど。
それがきっと、必要以上にATという兵器の存在感を際立たせるのでしょう。本当に登場人物の描き方はへたっぴなんだけど、サスペンションを調整しきれていないATの偏った揺れ方だとか、舗装路にターンピックを突き刺してはじかれる時の振動だとか、電源を落としたATコクピットの寒さだとか、そんな部分の描写ばかりはえらい身体的かつ視覚的で、熱中して読んでると本当にポリマーリンゲルの匂いがしてきそう。そういえば、昔ガサラキのノベライズを読んだときも、物語はまるっきり面白くなかったけど、ローラーダッシュがなくガションガション走るTAの揺れと、それによるTA酔いの描写だけがとっても印象に残ったっけなぁ。
野崎さんはボトムズ本編の予告の部分を妙に意識したみたい。でもそれはここではあんまりうまくいってない感じ。あれは短くテンポよく、そして銀河万丈の声で受肉させられて初めて成立するもの。リズムが悪くて読みづらい、字面だけ意識の独りよがりな描写が延々と続く文章はとってもとっても読みづらく、ついでに眠くもなってきます。そこに耐えて耐えて、いつしかグライディングホイールが加速してくればそこに開けるATという身体。いいじゃないですか、それだけで。というわけで、全編の3分の2くらいは本当につまんないですが、残りの3分の1はリアルボトムズ乗りへの道を確実に示してくれるこの一冊。6ギルダンは、高いか安いか……。
新たなる男達の物語
★★★★★
アニメ「装甲騎兵ボトムズ」オフィシャルスタッフによるボトムズ英雄譚
「ノベルジャパン」Vol1〜Vol6掲載作に加筆修正を加えた作品
・プロローグ
・ティディタル編
・トリニティ編
・フィヨルド編
・プラヴェ編
・エピローグ
・設定(AT、キャラクター)
を収録
舞台は銀河辺境の惑星デゲン、2大国家ヒュロス(ギルガメス支援)、モラニア(バララント支援)の戦いを描く・・・
サブタイトルのコマンドフォークトは最高のAT乗りであるフォークト中佐のもとに集められたスーパーエースによる最強の部隊の名称です。(ガンダムにおけるキマイラ隊?)
ボトムズのノベライズ物としても楽しめますが、普通の戦場ドラマ物としても楽しめます。
珍しいのは今まではギルガメス側のほうが優勢って話が多かったと思うのですが、この作品はモラニア(バララント支援)側の方がヒュロスより大国でヒュロス(ギルガメス支援)側は攻め込まれているってところが逆にいいですね。(やはり劣勢側の方がエースが生まれる)
ノベルジャパンで絶賛連載中の作品、しかもホビージャパンにてディオラマストーリーも展開中!ボトムズファンなら即買いの作品ですね。