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骸骨ビルの庭(上)

価格: ¥1,575
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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宮本作品の世界観 ★★★★☆
1947年生まれの宮本輝は、昭和復興の描写に長けている。

舞台の中心は終戦後の大阪の十三(じゅうそう)。たくさんの戦災孤児、遺棄児童を育てた2人の男、そして外国語学校にしようと建てられたイギリス人建築家の重厚なビル。
そこに血なまぐさい人の生き死に、登場人物の複雑な心理と育って来た背景を入れ込む。現代人が失ってしまった純粋な人間の心がそこにある。
そして最後まで展開が読めぬ、結果が知りたいままにリードされるそれがとても心地よい。でもラストは往年のフランス映画のように、何かこうすっきりとはさせてくれない。
読んでよかった ★★★★☆
戦争で親を失った子供達が成長し、過去を回顧しながら、
育ての親であり師である安部への感謝の思いを強くする。

そこにちりばめられた「報恩」の想いに素直に感激しました。

ストーリー自体には、捻りがないだけに、その想いの強さがストレートに伝わる気がします。

なんだか疲れたなという時に読んでもらいたい本です。
「起承」は完璧 ★★★☆☆
「地上げ屋の相手は戦争孤児達」というのは、型に嵌らない予想外の設定であり「起」としては完璧。戦後・現代と展開するストーリーはスリリングに感じるし、孤児たちの共同生活でできた絆は、何かの強い動機になっているんじゃないかと思わせぶりでもある。かなり早い段階で主人公が脅迫されることもあり、ミステリーチックに話は進められると期待させるものがある。

しかし、後半は期待はずれ。孤児たちの証言は重複する部分が多いので、証言が重なるにつれて話がだれていく。証言に食い違いがあって、それが謎を解く鍵なのかしらんと思って読んで損した気分。

戦後、親代わりに孤児を育てることは筆舌に尽くし難い苦労があるだろう。しかし、それを伝えたものは数知れずあるんだから、フィクションでそれを採り上げるとしたら、何か他のエッセンスが必要ではないだろうか?前半はそれを期待させるのに残念。

おいしそうな料理ネタは大好きだけど、読み終わってみると蛇足だね。
生きるって過酷。しかし何かを見つけるために。 ★★★★☆
戦後の荒廃した大阪に、焼け残ったビルが舞台。洋風の洗練されたデザインのビルに集まったのは、正反対の存在である戦争孤児たちだった。 一人の人が、ビルに住む様々な人物に聞き込みをするインタビュー形式の章だてになっていて、一人一人が同じ事件を違う視点から語るのだが、それによって思わぬ展開が見えてくる。 思ったのは、高度成長期時代の都市部にこのような貧しさを抱えて生きた人達がいることを、私はこれを読むまで知らなかったということ。 今自分が仕事などで出会う、登場人物たちと同じ団塊の世代は、学歴もあり良い環境で育っていた。 けれど高度成長期にみなが上に上がれたわけではない。今私が社会で出会っている団塊の世代は、親や家があった恵まれた人だったのだなー、と初めて気付いた。 視野が狭かった。
がっかりした。 ★☆☆☆☆
宮本輝という作家が『泥の河』『螢川』で見せた物語と思想の見事な融合、あるいは『幻の光』に漲っていた緊張感。何より忘れがたいのは『二十歳の火影』で見せた語りの妙。そうしたもののどれ一つこの『骸骨ビル……』には見出せない。

『二十歳の火影』はエッセイ集だったが、どこまでが事実でどこからが演出なのかわからない、まさに話の中身と語りの巧みさで読ませた立派な短編集だったと言える。
たとえばこんな話。
作者が少年時代。銭湯の帰りに夜空を行く飛行機の灯りを星のかけらだと決めつける父、そこから始まる父お得意の西遊記の物語り。それをたっぷり楽しませた後に「そやけど、この話は全部嘘や。でたらめのこんこんちきや」。 賢くて勇気のある玄奘法師の中にも「猿とか豚とか得体の知れんお化けみたいな心」があったということだと語る父。
そういう宮本輝の物語り作家としての真骨頂は、この上下2巻の冗長なお話には影も形もない。作者はそんな作家としての最低限の節度などどこかに置き忘れてしまったのか、あるいはとっくに捨ててしまったのだろうか。

人物や状況の強引な設定や運び、物語の中に唐突に挟み込まれる露骨な人生訓には興ざめどころか辟易する。極めつけは電車の中に置き忘れられた簿記の参考書を、主人公が偶然手にして、そこに書き込まれた日蓮の遺文の一節に衝撃的な感銘を受けるという話だ。前後何の脈絡もなく、ただ回想の一場面として唐突にそれが提示されるだけなのである。どうせならはじめからそのつもりで仏教説話か、いっそ今昔物語集を読んだ方がよほど説得される。私たちが読みたいのは「物語り」という時間芸術の中での感動だ。ストレートな説教ではない。

宮本氏は、師を持たぬ人生は不幸だ、そしてまた、恩ある師を裏切ることは人間として最低の行為だ、ということを登場人物に繰り返し言わせているが、そんなメッセージばかりが強調されると、みずから師と仰ぐ人物を擁護しようとしたかっただけの作品なのかと勘ぐりたくなってしまう。
初期の宮本作品に見られた、物語による説得が失われてしまっており、大変残念な作品だった。