懐かしのデオダート クロス・オーヴァー・ミュージックの旗手
★★★★☆
良い音楽は時代を越えて聴かれます。大ヒットしたエミール・デオダートのこのアルバムも、今でも光り輝き音楽性があると思っています。我々の頃はクロス・オーヴァーと言っていました。フュージョンに入れても良いのですが、もっと多用な音楽スタイルを内在しています。
1973年の録音ですから、ブリティッシュ・ロックの影響も受けていますし、マイルス・ディヴィスが電子楽器を使用した「ビッチェズ・ブリュー」のスタイルもそこに聴き取れます。出自であるブラジルのラテン音楽、特にボサ・ノヴァに刺激を受けているのが良く分かります。
「Super Strut」の疾走感がステキで、聴いているうちに心地よさが身体中を駆け巡ります。ソウルフルな演奏が8分以上展開されますので、躍動感に身を任せている内にエンディングへ突入する快感を味わえるのが、このCDの魅力となっています。
ガーシュイン作曲の「Rhapsody In Blue」のスピード感がたまりません。当時よく聴きましたが、今でも新鮮な驚きと感動に包まれています。音楽ジャンルを越えたサウンドですので多くの人に再認識してほしいと思っているのですが。
「Slyscrapers」のパーカッションによるリズムのきれの良さが秀逸です。ブラスの咆哮が、チェイスやシカゴ、ブラッド・スウェット&ティアーズのようでもあり、あの時代を代表するサウンドのエッセンスのような快適さが感じとれます。ブラス・ロックという音楽ジャンルにも近いですね。
「Pvane For a Dead Princess(亡き王女のためのパヴァーヌ)」は、ラヴェルの原曲の抒情性と神秘性を併せ持つ演奏になっています。高貴な香りが漂う演奏でクラシックファンにもオススメできます。
日本盤は5曲ですが、この輸入盤には3曲が付け加えられています。
白眉はガーシュウィン作品
★★★★☆
'70sに隆盛を極めたクロスオーバーフュージョン・シーンでプロデュース、アレンジ、コンポーズ、プレーイングでの才を存分に発揮したデオダート。CTIレーベルでの2nd作品が本作('73年作)。'70s後期にはディスコサウンドに迎合するような(?)作品を出すようになりましたが、やはり個人的に面白く聴ける作品というのは'70s中期あたりまでの諸作かなぁと思います。
時同じくしてB.ジェイムスといった才能もクラシックからのインスピレーションをクロスオーバーに組み込む事で人気を博していましたが、様々な音楽の融合が加速してきた時期なのでしょう。
本作での白眉はガーシュウィンの作品を取り上げた9分近くに及ぶ[2]でしょうか。所謂オリジナルではストリング入りで華麗に演じられるこの曲ですが、クロスオーバーとしての見事なアレンジで聴かせてくれます。また、非常に個人的な好みではありますが、[1]でのダイナミックなドラム(B.コブハムか)と近年とは全く違った音(^^;で飛ばすJ.トロペイのギターが好きです。
CD収録曲は、オリジナルアルバムに加えて3曲のボーナス・トラックが含められていますが、その内の1曲[8]はスティーリー・ダンの初期ヒット曲。