いよいよ、わが国にもとても良い「Business Economics」あるいは「Managerial Economics」の教科書が登場した。
学部上級生あるいは社会人大学生向けのレベルで、必ずしもミクロ経済学の修得を前提としないように配慮されている。経営戦略論やマーケティング論で取り上げられる経営学のトピックスに対して、ときに大鉈のように、ときにカミソリのように、ミクロ経済学的な分析で切り込んでいく様子は胸のすく思いさえする。伊藤元重氏の『ビジネス・エコノミクス』をさらって読んでから、本書で理論的な基礎をみっちり習得するのがよいだろう。この本をきっかけに、わが国でも経営経済学の教育が更に一層進展することを期待する。

本テキストは，基本的な経済学の分析用具を用いて，「市場，競争と戦略，組織」という観点から，流通・マーケティング，経営戦略，競争戦略等のビジネス現象の説明を行っている．著者は「日本市場の競争構造（1992年，創文社）」で「日経経済図書文化賞」を受賞された国内トップクラスの研究者であるため，これまでの類書にはない「一本の糸」で記述が進められている．そのため，学部の学生から学生を指導する研究者にも価値あるテキストとなるであろう．また，このテキストを読み終えて，さらに「Business Economics」に関心をもたれた方は，京都大学 成生達彦先生との共著「現代のミクロ経済学：情報とゲームの応用ミクロ（1997年，創文社）」を読まれることをお勧めいたします．本テキストにより，国内の大学での「Business Economics」を扱う講義・ゼミの普及が加速されること間違いなしです．