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自閉症の現象学

価格: ¥2,730
カテゴリ: 単行本
ブランド: 勁草書房
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自閉症を記述するツールとしての現象学 ★★★★★
 自閉症の外面についてはKannerから始まる膨大な知見が集積し、また、内面については高機能自閉症者の自伝から得られたものは大きかった。だが、自閉症の発達を記述するとき、比較されるのは従来の発達心理学であり、それ以外のものはなかった。あるいは、レビュアーが寡聞にして知らなかっただけかもしれない。漠然とではあるが、自閉症の内面を記述するには、異なる方法論あるいは理解体系が必要なのではと考えていた時、目にしたのが本書である。現象学で自閉症を記述するという営みは新鮮であり、かつ納得しやすく、この記述が成功しているのは、世界をどのように認識するかを記述することを目的とした現象学ならではとも思える。定型発達と自閉的発達の2つの方向性をもつ発達心理学が成立して、始めて我々は自閉症も含めた発達の意味を理解できるのだろうか。今後も筆者の思索に期待したい。
 蛇足ながら、初めの部分で「社会的微笑」の意味を取り違えているようだ。

 この書籍は、何度も読み直す必要がある。その都度発見があり、筆者の手探り的に進んでいる思考が読み取れる。
 この部分も検討すべきであろう。
P92〜93
 もし裏側が存在しないなら、裏側までも展開図にして描くことはないだろう。つまり、彼は裏側の面の恒常性に気づいている。

 これは、「時間秩序がないとあらゆる面が視野の中に集められてしまう。」と後段に記載されている説明のほうが適切であろう。彼には「裏側」が次元として未成立であるため、連続としてとらえているのだ。あくまで、恒常性に気づいてはいるが、それを「裏側」とは気付いていないということになる。
こういう視点もあるのか・・・ ★★★☆☆
哲学の立場から自閉症について考察した書である。医療・福祉・教育以外からの視点で自閉症を扱った書物というものに初めてお目にかかった。フィールドワークの成果をもとに綿密な考察を行っているので、決して机上の空論ではない。否、かえって一般的な方向性からでは見えてこなかった地平の広がりが見えてくる、知的刺激をもたらす書である。

考えてみれば哲学は人間の意識を考えることには深い伝統を持っている。自閉症の人々がどのように物事を捉えているか、自分と周囲の世界の関係をどのように感じているかということを考察するには哲学からのアプローチというものは意外と適しているのかもしれない。

哲学の立場から自閉症を眺めると、興味深い風景が広がっている。
個人的には第3章の「流れない時間」、第4章「平らな空間」に強く興味を引かれた。時間や空間は数千年来哲学が取り組んできた課題である。そして、医学ではふれることの少ない課題である。

また、これまでの哲学の議論のうち、自閉症の人の世界を包摂できない論に異議を唱えていく著者の思索はより深い見解への道を開くもののように思われた。自閉症の人も当然人間である。ある種の人間の世界を説明しきれないような論が人間普遍の論として通用することはないだろう。自閉症の人のあり方がより深い人間理解や哲学の構築につながると言う事実には爽快なものを感じる。