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月瀬幻影―近代日本風景批評史 (中公叢書)

価格: ¥1,094
カテゴリ: 単行本
ブランド: 中央公論新社
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ネーミングのうまさ ★★★★★
大室幹雄氏の書名のネーミングのうまさには、いつもうならされるが、本書名もその例外ではない。「月の瀬」(つきのせ)を「月瀬(ゲツライ)」と読むシノワズリ(シナ趣味)の江戸人たちの風景の見方、つまり自然をそのままに見るのではなく、社会的秩序に従って見ること。ここでは彼らの頭を満たす漢文の世界観、審美観によって風景を見出すこと、それはほとんど幻想であること。本書のポイントが、もうすでに書名に見事に表徴されている。しかも、ゲツライゲンエイと頭韻まで踏んでいる。大室氏のテクスト解読力は、あの『劇場都市』シリーズですでに定評のあるところだが、ここでも江戸漢文に対して遺憾なく発揮されている。「あとがき」でふれられているように、本書には後編がある。その後、大室氏は理論的発展として、『志賀重昂『日本風景論』精読』と『ふくろうと蝸牛』をすでにものしている。後編まであと一歩なのだが、本書の終わりに近い部分でふれられた、渡辺崋山のモダンな明るい風景画、大室氏によれば「崋山が見たのは山水ではなく自然であった、そこで描かれたのは彼自身の風景であった。」という、この部分が更に発展して一書と成る可能性も否定できない。刮目して期待しよう。